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3人で平門の部屋まで向かうと、外まで聞こえてきた療師の声。
ここにいることは間違いないのだが、何か怒っていらっしゃるような声色で、少しいつもより怒鳴り気味だ。
おそるおそる與儀が戸を開けて中に顔を出し、それに花礫も続く。

「ええかっ!よく見ろ!」

部屋に入れば、療師は平門に怒っているようで、部屋にずらりと並べられた本棚から本を取り出す。
パラパラとページを捲りながら話を続ける。

「摂取した細胞組織から導き出した結果が、『无』がこれである可能性を高く示してるんじゃっ!」

開かれたページには、まっ白いもふもふとした丸っこい動物の写真。
名前はニジというらしい。
无が、この動物?
療師はこんなムキになってまで冗談を言う人ではないだろう、どういうことだ?
私が疑問に思っていると、それを真っ向から信じてる與儀が驚きに声をあげた。
花礫は正反対で、まるで信じていないといった様子で療師の話を一蹴する。
もちろん療師はそれに反論するが、すぐに私達が何故ここにいるのかと疑問を投げかける。
それには頭を悩ませている真っ最中だった與儀が素早く反応した。

「ア!无ちゃんが目を覚ましたって花礫くんが…」
「そうか!ちょっと見て来ようの」

療師の言葉に、私たち3人はついていこうとを踵を返したが、平門が與儀を呼びとめ、與儀だけはここに残った。
先ほどの部屋へ戻ると、无にはツクモがついていてくれたらしく、何故か赤く目元を腫らしている无がベッドに座っていた。

「療師!」
「どうじゃ、具合は」
「悪くはないようですが…」

ツクモが療師に受け答えしている間に、无は私と一緒に部屋にやってきた花礫の名を呼ぶ。
だが、花礫はそれに答えることはせず、ただふい、と无から視線を逸らした。
无はわかりやすくしょぼんとへこみ、それに気付いたツクモが花礫へと駆け寄る。
私は花礫をツクモに任せ、その間に无へと近寄る。

「无、大丈夫か?」
「名前ちゃん…うん、大丈夫」
「そうか、なんともないようでよかった」

无の頭を優しく撫でれば、无は嬉しそうに目を細める。
その様子を見ると、なんとなく无が動物と言われたことに納得できる気がした。
身体に以上は見当たらず、大分落ち着いた无は花礫とともに部屋に戻った。
二人の背中と連れそうツクモの背中を見送って、私も部屋へ戻ろうと踵を返した。




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