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「與儀!」
「くっ…!」
「ちっ、ツクモ!伏せろ!」

裁ききれない目玉は无とツクモの方へも向って行く。
私は先ほどと同じように手を翳す。
ツクモに无とともに伏せるよう指示してからもう1度蒼火墜を放つが、それでも逃れた目玉はツクモも捕らえる。
ツクモの機転でなんとか无が捕まることはなかったが、まだ目玉は執拗に无を狙う。

「しつこい奴だな…!縛道の四 這縄!」
「うぐっ!な、なんですか、これは!」

化け物が絶えず放ってくる目玉を止めるために縛道でヤツの動きを封じる。
これでもう目玉は投げれまい。
その隙に无へ向う目玉を斬ろうと鎌を振り下ろすが間に合わず、今度は无を庇った花礫が捕まってしまった。

「花礫!」
「何ヤッてんだ…テメーだろ、狙われてんの…っ!走れ!のろま!」
「无ちゃん逃げて!」

花礫や與儀の叱責を受けて後退りをする无だが、小さくやだと呟く。
みんなが捕まったまま一人だけ逃げるなんて嫌なのだろう。
足元にあった大きめの石を持ち上げる。

「みんなを放して…放してー!」

叫びながら投げるが、石はほとんど前には飛ばず、すぐ近くにいるツクモの足元へと転がった。
それを見て、化け物は嬉しそうに笑う。

「おや、非力だ…けれどその紅い瞳は素敵ですねぇ」
「黙れ化け物が!」
「うがぁっ!」

這縄で腕の動きは封じられているが、それでも无へと近付く化け物。
私が化け物と无の間へ割り込んでその体を鎌で切り裂いた直後、空から无の前に何かが落ちてきた。
肩越しにちらりと見遣ればそれは羊。

「一時間経っても『見つけた』って言われなかったメェ?かくれんぼは終了メェ」

羊はそう言うと无の脇を持って勢いよく飛び上がった。
それは、與儀がつけてくれた『かくれんぼ設定』だ。
見つけてもらえない人のところには羊が向かえにきてくれるという設定。
まさかこのタイミングで羊が迎えにきてくれるとは思わず、その場にいた全員でぽかんと口を開けて无の飛んでいった空を見上げた。
真っ先に我に返ったツクモが、足元にあった先ほど无が投げた石を蹴り、化け物に見事命中させる。
化け物は「ぎゃああああ!」と悲鳴を上げながら森の方へと跳んで行く。

「逃げた…」
「待て!逃がすか…っ!」
「名前ちゃん、ダメ!」
「っ…與儀」

逃がすまいと地を蹴ろうとしたが、與儀に止められ渋々その場に残った。
能力者と戦うために組織された『輪』の闘員が深追いするなと言うのだから、それに従わないわけにはいかない。
たとえ私の方が踏んできた場数が多かろうと、対能力者なら彼らには敵わない。
捕まった三人を解放して、揃って艇に戻った。




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