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言いながら、口や手は止めずに私や與儀を見遣る。
私たちは、花礫の言葉に顔を見合わせる。
言ってもよいものか…悩む私に與儀もツクモも眉を下げる。
結局、何が一番最善なのかは誰もわからないのだ。
それに、お互いこれからしばらくはこの艇で一緒に暮らすのだ。
おのずとわかることでもあるなら、平門と與儀に話したときのように、隠して私以外の口から聞かせるよりかは、私が包み隠さず全てを話す方がいい。
私は、花礫と何が起こってるのか把握できずにきょとんしている无を見て口を開いた。

「やはり、隠すのは性に合わないな…前置きとして、信じるか信じないかはお前次第だと言っておく」
「前置きとか、そんな勿体ぶるような話なわけ?」
「まあな…端的に言えば、私は異世界から来た死神だ」
「は…?異世界?死神?」
「元の世界では、もうとっくの昔に私は死んでいるんだよ。そのあと、死んだ者が逝く尸魂界というところで死神になるための勉強をして、護廷十三隊という尸魂界や現世を守る組織の一員となった。私はその十一番隊に所属している」
「ちょ、ちょっと待てよ、死んでるって…」
「落ち着け、質問は全部聞いたあとにしろ。一つ一つ答えてたらキリがない」

理解できないというように身体を乗り出した花礫を制し、落ち着かせる。
渋々と引き下がった花礫を確認し、私は続きを話す。
與儀とツクモも静かに聴いている。
无だけは何がなんだかわからないという様子で、おろおろと視線を泳がせていた。

「死神になった私はある日、非番で暇だったから現世に遊びに来た。すると、気付くと突然この世界に来ていて、能力者に襲われた」
「能力者…」
「あぁ、もちろん勝ったぞ、私は強いからな。ただ、そのとき大量に返り血を浴びたところを與儀に発見されてな、保護されて今に至る。死神は周囲の霊子や霊圧を自在に操り戦うんだ。花礫の言う空を飛ぶことだって、あれは飛んでるわけじゃない」
「は?だってあれ、急に消えて…」
「瞬歩という高速移動術があって、それは急に消えるような錯覚を起こす。あれは、空中の霊子を固めて足場にし、瞬歩を使って走って行っただけで、與儀たちのように空を飛んだわけじゃない。死神とはそういうものだ…どうだ?信じなくてもいいが、理解はしたか?」
「まぁ…」
「信じられないかもしれんが、れっきとした事実だ。といっても、別段気にするようなことでもないからな、普通に接してくれたらありがたい」
「…あ、あぁ」

依然困惑したような表情を浮かべる花礫であったが、一応理解はしてくれたようだ。
信じているのかどうかは知らないが、私にはこれ以上言うことはない。
私は止めていた手を再度動かし、料理を腹に収めていく。
つられるように與儀やツクモも食べ始め、花礫もそれに続く。
あらかた疑問に思っていたことは私が話し尽くしたようで、今は與儀と无の会話に混じりながら食事を進めていく。
私はそれを眺めて安堵の息を漏らすが、同じようにほっとした表情をしているツクモと視線が絡み、お互い微笑んだ。
私が異世界人、しかも死神であると聞いて、花礫は私を怖がったり気味悪がったりするかと思ったが、この分だとそんなことはないようだ。
これからしばらく一緒なのに、そんな接し方をされたら、いくら私といえども哀しいし、雰囲気が悪くなってしまうからな。
隠すことなく全部言い切り、とてもすっきりした私は遠慮することなく料理を腹に収めていった。




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