「…そうか、わかった」
「分かってもらえて嬉しいよ」
「話はそれだけか?」
「あぁ、報告しておくべきだと思ってな」
「ありがとう、聞けてよかったよ」

平門に礼を言い部屋を出ようと立ち上がったとき、戸が叩かれる音がした。
私も平門もそちらに視線を向ける。

「平門サン?與儀です」
「ツクモです」
「あぁ、入れ」

入ってきたのは與儀とツクモ。
どうやら2人とも平門に呼び出されたらしいが、いつの間に呼んでいたんだ。

「お前達に話があってな…あぁ、名前はもう戻っていいぞ。呼び出して悪かったな」
「あぁ」

2人と入れ違うように私は部屋を出た。
平門の部屋を出て自室へ向ったのだが、廊下が長いこととどの部屋の扉も同じように見えてしまったことで、自分が今どこにいるのかすらわからなくなってしまった。
羊に道案内を頼めばよかったと後悔するも、後の祭りだ。
阿呆な自分にため息をもらしつつ、とりあえず與儀の霊圧を辿ることにする。
平門のところに戻って忙しそうな平門に助けを求めるよりも、暇そうな與儀に頼んだ方が早いだろうと考えたからだ。
…與儀に失礼か、すまん。
心中で謝り、廊下を歩けば與儀の霊圧は朝来た食堂の中にあった。
中からは賑やかそうな声が聞えてくる。
声と霊圧から先ほどの4人が全員いるのだとわかる。
誘われるように戸を開けると、ちょうど椅子から立ち上がったらしいツクモをはじめ、全員の視線がこちらへ向いた。
與儀とツクモの話が早かったのか、私が迷いすぎていたのか。
机の上にはこれまたおいしそうな料理が並び、腹の虫が思い出したように騒ぎ出す。

「あ、名前ちゃん!今、君を探しに行こうとしてたんだ〜。部屋に居なかったから心配したよ〜」
「迷ったかと思ったから…よかった」
「一緒にご飯食べよう!」

ほっとした様子で椅子に座りなおしたツクモは、私にも同様に座るよう促す。
私は腰を下ろしながら苦笑をもらす。

「想像通り迷ったさ。羊も見当たらなかったからな、與儀の霊圧を辿ってここまで来たんだ」

そう言えば、4人はきょとんとして私を見た。
すぐに自分が発した霊圧という言葉がわからないのだろうと思い、説明をする。

「あぁ…霊圧というのは、お前たちの言う霊感だと思ってくれていい。よく、幽霊が見える奴がいるだろう?それは、そいつの霊圧が高いからだ。私たちは、その個々人に備わっている霊圧を感じることができるんだ」
「へぇ…」
「ははっ…名前ちゃんはすごいナー…」

感心したように感嘆の声を漏らすツクモとは対照的に、怯えたように顔を青ざめる與儀は、少し引き攣ったような笑みを浮かべる。
話を変えようとでも言うよう「さ、食べよ!」と声をかける與儀はどこか強がっているようで、なんとなくではあるが彼は幽霊とかそういう類のものが苦手なんじゃないかと考えて苦笑した。
それが本当だとしたら、與儀は私に近寄ってくれなくなりそうだ。
與儀の声に賛同し、いただきます、と手を合わせてから机に乗る料理に手をつけた。
しかし、食べ始めたところで花礫が「なあ」と、変えたはずの話を元に戻した。
視線は私に向けられている。

「会ったときからずっと気になってんだけど…アンタ何者?『輪』の闘員でもねーのに空飛ぶし、バカみてーに強ぇし」




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