私は瞬歩で倒れている少年の元へ近寄る。
この世界で初めて使ったのだが、使えてよかったと人知れず胸をなでおろした。
突然現れた私に驚いたのか、彼は私を見上げて目を丸めている。
それは2人組の男たちも同じようで、慌てた様子で私を見る。
私は彼らの正面に立ち、慌てふためく彼らに向かって手を差し出した。

「お前、今、どこから…!」
「目の前に、突然…っ、どういうことだ!」
「そんなことはどうでもいい、その嫌がっている少年を離してもらおうか」

男に言えば、彼らの表情が驚きのものから真剣なものへと変化した。
一人が、バチバチと音のする機械を私に向けてきたが、それを軽々と避け、男の手首に手刀を送りソレをあっさりと奪う。
地面に落ちた機械を遠慮なく足で踏みつけて粉々にする。

「存外、脆いものだな」
「てめぇ、よくも…!」

少年を捕らえたままの男は、懐から小さなナイフを取り出すと、それを白髪少年の首元に宛がった。
しかし、それを見越していた私は瞬歩で男の懐へ入り込み、顎を下から突き上げる。
呆然と立ち尽くすもう一人の男へは、腹に回し蹴りをお見舞いしてやる。
2人を仲良く地に伏したところで、すぐ近くに人の来る気配がして顔を向けると、着ぐるみを脱いだ與儀が上から飛び降りてきたところだった。
私が黒髪少年の近くへ寄った辺りから霊圧を感じていたから、いるのはわかってはいたのだがな。

「名前ちゃん、君何者?すっごく強いね〜…」
「護廷十三隊なら、これぐらいは出来て当然だぞ?むしろこの程度のことが出来なければ死神は勤まらない」
「ホントにぃ?すごいな〜…」

與儀は困ったように私に笑いかけると、2人の少年の方へ向いた。
突然近寄って突然目の前にしゃがみ込むものだから、白髪の少年は驚いて肩を上擦らせていた。

「殺人指名手配犯か…でもオカシイな〜、イメージじゃないよねぇ〜?」
「そ、れ…」
「まあいっか。君等捕まえろって言われてるし、とりあえずついてきてよね〜?」

立ち上がって携帯電話を取り出し、こちらに背を向けて通話をする與儀。
その間に、私は彼らの側にしゃがみ込んだ。

「大丈夫か?ケガはしていないか?」
「ケガ、してないっ!助けてくれて、ありがとう!」
「どういたしまして。君は大丈夫か?」
「別に…つーかアンタ、何者だよ…強すぎんだろ」

体の感覚が戻ってきたのか、上半身を起こした黒髪の少年が鋭く私を睨みつけた。
助けてやったというのに随分な態度だな、と苦笑しながら口を開けば、與儀の明るい声と重なった。
ほぼ同時にゴウンゴウンという地響きのような音が聞えてくる。

「じゃあ行こっか♪『輪』の艇へいらっしゃ〜い!」

私たちの遥か頭上、上空に浮かぶのはあの大きな艇だ。



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