「ショー?」

話によると、平門を含めたこの弐号艇の闘員は、一昨日まで、ここトージという街で仕事をしていたという。
街を全面的に封鎖して、あの化け物と関わりのある犯罪者を炙り出すというもの。
一斉捜査と呼ばれるそれにより、街に多くの迷惑をかけ、恐怖を与えてしまう。
そのお詫びに、住人を楽しませる見せ物を催すらしい。

「それで、名前ちゃんは艇にお留守番になっちゃうんだ…ごめんね?」
「私のことは構わなくていい、大人しくしてるよ」
「うん…じゃあ、行ってきます!」

與儀を見送った後で、部屋にやってきた羊に私は先ほど思いついた頼みごとをする。
すまない與儀、大人しくはしてられん。

「少し身体を動かしたい、稽古場に連れてってくれないか?」
「わかったメェ」

斬魄刀を持って羊の後をついて行けば1つ扉があった。
開けば、中は広々とした空間で刀を振り回すにはうってつけだった。
羊に礼を言って扉を閉める。
これだけ天井が高いのなら、始解して鍛錬しても大丈夫そうだな。

「闇に舞え 胡蝶」

解号を唱えながら、そういえば斬魄刀についての詳しい説明は平門達にしてなかったなと気が付いた。
森の中で與儀が私を見つけたときは始解を解いてあったし、死神について説明したときも斬魄刀には触れなかった。
近いうちに話しておかなければならないな。
そんなことを考えているうちに姿を現した大鎌。

「さて…やるか」

昨日は色々あってサボってしまったから、今日はその分もしっかりやらないと。
気合いを入れて鎌を振り回す。
尸魂界では、こうした道場での鍛錬が毎日の日課だった。
隊士達に教えてやることもよくあった。
戦うことしか能が無いような連中の集まりだったから、稽古は汗だくになろうと、女である私から指南を受けようと、ただ楽しそうに木刀を振るのだ。
更木隊長が気まぐれに現れたなら、我先にと手合わせを申し込み、こてんぱんにやられるのがオチなのに皆嬉々として隊長に挑んでいく。
もちろん私だってその中の一人だ。
毎日毎日、騒がしくてとても楽しい日々だった。
この世界に来て、たった一日。
それなのに、こんなにも十一番隊が恋しい。
早く、更木隊長や草鹿副隊長、隊士達に会いたい。
気持ちが沈みそうになって、慌てて邪念を振り払う。
戻ることを諦めはしないが、無いものねだりもしないと決めたんだ。
ここに居ない人間をいくら思っても、自分が辛くなるだけだから。
だから、現実を見て、受け入れて、生きると決めた。
戻ったとき、足手まといにならないように、隊士に負かされたりしないように、今は鍛錬することしかできない。

「集中しろ…っ」

今は、今できることをやるだけだ。




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