くじらの体温 | ナノ


夏休みに入ってすぐ、子供を預かった。
預かってくれないかと相談された時が初の対面であった程、遠い親戚の子。ただ見覚えはあった。なぜかといえば、毎日のように雑誌、テレビで見るから。
目の前の自分よりも幼い子供は、今をときめく子役モデルだった。

「きせりょーたです!よろしくおねがいしまッす!」

元気に挨拶をしてきたその笑顔は、向こう側で見るものと全く同じ、まるで向日葵が咲いたような笑顔だった。

「あかしっち、練習行くんすか」

帝光中学校は実家と離れている。その為親が借りてくれているマンションに赤司は一人で住んでいた。中学生が一人で暮らすにはかなり広すぎなその部屋にはもう慣れた。
心配性な母親が週に何度か電話をかけてくるのが少し過保護気味かとは思うが。

「ああ、夕方までには帰ってくるとは思うから……」

夏休みとは言っても、帝光バスケ部には関係無い。寧ろほぼ毎日、練習に打ち込める絶好の機会だ。
まだ十歳の涼太に留守をさせるのも不安があったが、大人びた性格で更に涼太は基本的な家事は一通り出来ていた。元々親に教えられていたのか、少し教えただけですんなり飲み込んだ。
特に心配する必要のない子供。そんなタイプだった。

「バスケ、やってるんすか?」

そんな彼にしては珍しく、おずおずと何かを言いたげにしていた。
あ、これ…もしかして。

「……行きたいの?」

確認するように尋ねれば、遠慮がちにこくりと頷く。

「そう…。じゃあ、行こうか」

涼太なら迷惑になることは無いだろう。
行こうかと言うと、ぱあ、とまた向日葵が咲いた。





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