965 | ナノ


全部、終わった。

あの時から、いやもしかしたら生まれた時から止まることを許されなかった、自分が許したくなかった。ごめんね、君には辛いことばかりを押し付けてしまった。

耳触りとも言ってしまえるブザー音と共に、空気の流れまで止まってしまい、酸素が消えてしまったような感覚。
呼吸が出来ない。
出来ないなんてただの勘違いだってことはわかっているのだが、少なくとも、今はそう表すよりも他になかった。周りの喧騒も顎を伝い落ちていく汗も、何もかもがスローモーションになる。なんだかひどく疲れてしまい、重力に逆らわずに瞼を閉じる。
いつぶりだろう、心臓が破けそうなほどに上がる息を整え、吐き出した息と同じように、誰に聞かせるわけでもない言葉が漏れ出た。

「僕は、負けた」
「俺は、負けた」

今は少しだけ、足を止めてみよう。