零式 | ナノ

 真っ白な幸福

マキエ/裏庭のベンチでほのぼの




そこは彼のお気に入りの場所だと聞いて、いつもいるチョコボ牧場の方にいなかったからそこに足を運んだ。
最近の自分は何かにつけては彼の良くいる所に行っている。あまり自分では考えたくはないがこれはストーカーというものなのではなかろうか。いや、特に彼がそれについて何か言っているという訳ではないが。
…考えるのはよそう。エースに想いを伝えたのはごく最近のこと。そういった経験が乏しくまた興味もないエースにその感情を理解してもらうのに時間はかかったものの、彼もまた自分のことを受け入れてくれた。それまでの関係が一気に崩れてしまったらどうしようかとも思ったが、そんな心配はどうやら無用だったらしく、互いの気持ちがすれ違うことは無かった。
周りも、勘の鋭い者は最初から気づいていたようだが、そんな自分たちのことを祝福してくれた。たまにエースを溺愛する一部から嫌がらせとも思えるようなことが時折あるが。デュースに至っては何か恨みでもあるのだろうか…。
自分のこれまでをざっと振り返りながら、マキナは裏庭に付いた。綺麗に整備され、樹木や花で飾られたそこは良い憩いの場所であった。聞いた通り、エースはそこにいた。どうやら寝ているようで起こしてしまわないようそっと近づいたつもりだったのだが、手前まで近づいたときエースが小さく身じろぎをした。

「ん……」

「ごめん、起こしたか?」

隣に座り、エースの少し乱れた髪を直すように触れた。心地よいのか目を細めるエース。まだ寝ぼけているのか、目蓋をまだ半分伏せたまま瞬きを繰り返し、蕩けた表情をしている。寝顔を見ることが出来なくて残念だな、などとふと思った。そのまま起きるのかとも思ったが、まだ夢現だと勘違いしたのか、エースはマキナの方に頭をぽすんと乗せた。

「な……」

普段のエースはそう簡単に他人に甘えるなどしないものだから、余計に今の行動に体が一瞬強張った。しかもまるで全てを委ねるかのように、体重をこちらに傾けている。どうやらそのままもう一度寝入ってしまったようだ。

(信頼されてるって思って良いんだよ、な)

自分の肩ごしに見ることが出来ないと思った寝顔を覗き見てみると、長い睫毛が少し震えた。安心しきったその幼さを残す顔を見て、思わず笑みがこぼれる。
視線を落とすと、何か夢でも見ているのか、エースの指先がピクリと動いた。自分のように剣を握らない華奢な手にそっと自分の手を重ねる。その手を包み込むと、小さめの手は軽く収まってしまう。そのまま指を絡めれば、自然とエースもそれに応えてくれた。目を覚ましたのだろうかと思って見てみても、目蓋は閉じられたまま。
でも今起きたら、素直に頼ることをあまり好まない彼のことだ。直ぐに離れてしまうだろう。それを想像して小さく笑うと、マキナは髪越しにエースの額に口づけを落とした。






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ヒロヒロ様リクエストでマキエです
マキナは男らしくアタックしたもののそこからへたれればいいなぁ...
ヒロヒロ様、リクエスト有り難うございました!



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