零式 | ナノ

 日差しに煌めく花冠

クラA/ほのぼのor甘々/第三者視点




「シンク、またマント崩れてる」

「あ、えへへ、ごめんなさ〜い」

「まったく…」

面倒見が良い、とよく昔から言われるが、自分ではあまり周りを見ていないと思っても癖になってしまいつい周りを気にしてしまう。頼られることは嫌いじゃないからいいが、この世話焼き癖は何とかならないものか。
セブンはシンクのマントを直してやると自らの病気のようなくせに小さく苦笑とため息をついた。セブンは小さい頃から頼られることも多く、自然と気配りができる。というよりしてしまうのだった。人の気持ちの変化も敏感に感づいてしまうくらい。
だから幼馴染の最近の変化にも。最近、何となく思うのだが、何だかエースの雰囲気が変わったように思える。なんというか、暖かい、というのか。
あまりにもあいまいでうまく表せないが、以前とは確実に何かが違うように思った。

「なぁエース。最近」

どうかしたのか?何かあったのか?どう聞いたら良い者か悩み言葉を切ってしまう。エースは訳が分からずきょとんとしている。

「セブン?」

目の前で何か悩みだしてしまったセブンに逆に問いかけようとするエース。だが彼の名を呼ぶ声がしてエースはそちらに思考を移した。
なんと言っていいものか。顎に手を当て考え込んでいると、ふいにエースの名を呼ぶ声。この声はクラサメか。

「なんだ?」

「エース、またお前はカヅサの所に行っているそうだな」

「…それは」

もともと感情が読みにくい男であるが、今はなんだか少し怒っているような感じがした。カヅサ、そういえば変な研究者がいたがそいつのことだろうか。

「でも別に何もされてないし」

「そういう問題ではない。とにかくあいつには近づくな」

確かカヅサの研究を手伝って欲しいと言われたのだったか。
一度だけ自分も行ったことがあるが確かに一度体験すると二度と行きたくはないのかもしれない。何かされたという訳ではないが、見るからにあいつは怪しいし、より訳の分からない薬を飲まされたり嗅がされたりするのだなんて御免だ。
話からしてエースは未だカヅサの研究に付き合っているのだろうか。妙にお人よしなところが災いしたものだ。

「何故行く?お前には関係のない事のはずだ」

クラサメの問いに少しだけ眉を寄せ俯くエース。そういえば、クラサメは怒ってはいるが、なにか他の感情も混ざっているようだ。
普段から人の感情に敏感なセブンには見当がつくことだったが、その感情が自分のイメージの中のクラサメとはあまり離れているものだった。俯いているエースの言葉を待つクラサメ。

「それは、あいつ、が」

一言一言を紡ぐたびにエースの頬には朱が散らされていく。幼馴染の初めて見る表情に正直驚いた。

「アンタの事をよく知ってるから」

最後の方は尻すぼみになり聞き取れなかったが、エースのその言葉に一瞬目を見開いたクラサメは、ひとつ溜息をついた。それにエースが背けていた目を戻すと、クラサメの手が伸びてきた。思わずぎゅっと目を瞑るエースだが、頬に添えられた手の感触で再び目を開いた。

「そうか。それならば、直接私の所に来い」

こちらからは良く見えなかったが、ちらりと見えたクラサメの目は柔らかく、恐らくマスクが無ければ笑っているんだろうか。
あの男にも珍しいことがあるものだ。そうしてエースに何か耳打ちをすると、そのまま何事も無かったかのように行ってしまった。

「エ―ス、…エース?」

「あ、あぁ」

まだ頬を赤くしているエースを見て、ああそうかと自分の中で合点がいった。そしてこの幼馴染に自分の知らない顔をさせた男にちょっとした嫉妬心も覚えながら、目の前の訝しげな顔をする幼馴染を無性に可愛いと思ってしまった。

「どうかしたか」

「いや、何でもないよ。ふふ」




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名無し様リクエストでクラAです
便りがいのあるセブン姐さんにお願いしましたが男前な姐さんならエースのこと真っ先に気付いて色々フォローしてくれそうでつまり姐さんイケメン過ぎる^^
名無し様、リクエスト有り難うございました!



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