零式 | ナノ

 木漏れ日に見えて





「エース、ちょっといいか?」

マキナとレムが0組に編入してから数日が経ち、元々新しい環境に馴染みやすい二人のこともあるが、お目付け役だと知っていてもなかなか柔軟な0組。
直ぐに打ち解けていた。突っかかりにくい性格に一見見えるマキナも社交的で、何気一番反感していたナインも彼とはなかなか馬が合うようだ。

元々よくできた性格の女子も難なくレムと打ち解けた。

マキナは、0組はまるで、兄弟のようだと常々思っていた。ミッション中はもちろん彼らは私情は挟まない。
だけど普段このような日常に特に思う。

キングやクイーンが長男長女なら、年齢的には大して変わらない彼らだが、何となくデュースは下だけど何気一番しっかりした妹だとか、きっとセブンは年下の面倒を見るのが得意なんだろうとか。

自分も「弟」であるからそう思ってしまうのかもしれないが。

自分にとって大事な幼馴染のレムも、小さい頃から歳は殆ど同じようなものの、妹のように大事だった。

「さっきの授業のことなんだけど…ここ教えてくれないか?」

「ああ。ここは…」

0組の纏め役的存在のエース。

歳はデュースと変わらないくらいだろうか。

ということは、ここの兄弟は上と下がしっかりしていて真ん中がムードメーカー的な感じなのだろうか。
そう考えるとなんだか少しおかしくなってしまい笑みが堪えきれなかった。

「?マキナ、聞いてるのか」

なんだか様子がおかしいマキナに問うエース。

「悪い、聞いてる」

「本当か?」

まったく、と少し拗ねながらも丁寧に説明を続けるエース。
ふと、こんな感覚をどこかで体験したような気がした。自分もこんな風に教えていて、聞いているのか聞いていないのか、いつもはなかなか喧嘩腰になってしまうのに、仲が悪いという訳でもなく。

(そうだ…あのときも)

何が何だか訳が分からないがふといきなりがしがしと頭を撫でられる感覚。
恥ずかしくて居たたまれないのに、何故だか嫌な気はしなくて。

無意識に伸ばされる手。

「それで、ここの応用に使うには……」

あ、髪意外と柔らかいんだな。

猫毛でもなく、堅すぎずもない、ちょうど良いさわり心地の金糸を撫でながら、二、三回頭を往復する手。

「…。!な、何」

突然のことに驚きと戸惑いを隠せず、慌てて手を振り払うエース。

もし自分とレムが、この0組の「家族」に入れるのなら、自分も「兄」になるのだろうか。

「マキナ、どうしたんだ?」

まだ少し動揺しているのか、瞬きを何度か繰り返している。

―――――いや、つい。な。

そう言いふわりと微笑む…。……?
誰だったか。多分自分にいたという兄だろうか。

「マキナ?」

なんだろう、無性に愛しく、可愛く思えてしまう。この陽だまりのような時がずっと続けばいいのに。
そう願わずにはいられないほど大切になって行って。

「――――いや、つい。な」

そういって笑うと、府には落ちないがまぁいいか、というような少し拗ねたようなエース。



もしかしたら、自分もこんな顔していたのかもな



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