◎ いつか絶対気付かせるから
「おっししゅーりょー」
作戦内容にも支障なく、今回も0組の実力をいかんなく発揮したエース、ナイン、クィーンのメンバーでの制圧戦。
といっても今回は魔導アーマーやモンスターが大半の相手であった。
「全く…作戦に支障がでなかったからいいものの、相変わらず後先考えずというか」
「あぁ?んだよ何か文句あんのかよ」
「うーん…でも迅速に終わらせられたし」
ナインの一本気な性格は戦闘でも全面に出ており、構わずガンガン仕掛けるタイプであった。
そのためサポートがうまくできるメンバーと組むことが多く(大半がナインには慣れたもので難なく出来るのだが)エースとクィーンは中でもかなり上手いものだった。
「だよなぁ?」
ナインはエースの肩に腕をかけ引き寄せた。
「もう……すぐ調子に乗るんですから、エースも甘やかしてはいけませんよ!」
「ってゆーけどぉ」
「全然甘やかしてないよねー」
シンクとジャックが授業後に寛ぎながら上を見上げ、後ろの二人の様子を見て面白がるように話していた。
「おいエー」
「あ、ゴメン僕今からクラサメ指揮官に聞きたいことあるから」
「じゃあ俺も」
「いいよ。それにナインクラサメ指揮官とあんまり仲良さそうじゃないし」
「う、いや確かにアイツはあんま好きじゃねぇけどよ」
クィーンはエースがナインを甘やかすのではないかと心配していたが、そんな心配は必要ないようで。大体のエースのナインに対する態度はこんな感じである。
「なんかさぁー段々ナインに犬耳が見えてきそうだよー」
シンクは足をぷらぷらさせながら無邪気に言う。
「あー確かに」
ジャックも全面的に同意の意を見せる。
同じ施設で育ったエース達だが、昔から性格はたいして皆変わらずナインもまた、強引で口が悪かったがエースやキングには割合素直に従うのだった。
特にエースに対しては本当に飼い主と犬みたいな態度であった。
いわば大型犬か。
気付けばエースは既に行ってしまい、ナインに見えそうな犬耳がぺたりと垂れている、ような。
「あたしたちってそんなに群れて生活してなかったけどーナインがエース大好きなのはみんな知ってたよねー」
「そうそう!端から見れば不良に絡まれてる優等生だったけど」
「今思うと…寧ろ番犬みたいな?」
などと勝手なことを言っているが、実際その通りである。
先程からナイン本人には聞こえてはいないだろうという前提で会話をしている二人だが、実はナインに普通に聞こえていた。
というより、エース、という単語に反応しただけであるが。流石は番犬。
ただ、ジャックの「不良に絡まれる優等生」というフレーズに心なしか、らしくもなくショックを受けていた。
自分は幼い頃は、他のメンバーよりエースと行動を共にするのが多かった。
まぁその理由は、所謂一目惚れ、というやつだろう。
幼い頃、正直な話ナインは最初にエースを見たとき女の子だと思っていた。
その後直ぐ僕は、と話したためその幻想は儚くも崩れ去ったのだが、しかしナインはその時確実にエースに惚れた。それからエースを守ると心に誓い、一度決めたら突き通さなければいられない性分のナインであるからシンクとジャックの言った通りの番犬ライフである。
しかし不良に絡まれる。
もしかしたらエースは自分に怯えていたんだろうか。
そう思うといつもは単純…いや前向きなナインがどんどん自己嫌悪やら何やらで沈んでいく。
ナインが待てをくらいしょげている犬のような状態をシンクとジャックが面白がっていると、エースが帰ってきた。
「あれ…ナイン、どうしたんだ?」
事の原因である本人はそんなことは露知らず、先ほどと違うナインの様子を心配そうに伺う。
「エース…お前、嫌だったのか?」
見事に大事な部分を省いて言ったナインの言葉はエースには当たり前だが全く理解できず、しかしナインの様子がおかしいことは理解できる。
しばらく口元に手を当て考える素振りをした後、エースはとりあえず行動に出ることに結論付けた。
「あ」
二人の様子を見ていたシンクは口をポカンと開け、ジャックの肩をトントンと叩いた。ジャックが振り向くと、やはり同じように口をポカンと開けた。
ナインの視界は真っ暗になり、一瞬何が起こったのか分からなかった。しかし数秒逡巡すると、心地よい体温が伝わってきて自分はエースに抱きしめられているのだと分かった。
エースは立っておりナインは座っているので、ナインはエースに頭を抱かれている状態である。
(は!?……は!???)
なんて大胆な…ではなく。
引き剥がすことも
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