零式 | ナノ

 からからと陽気に鳴る、鳴る


「うっわ、エースってばほっそーい!!」

講義が終わった教室で、デュースに魔法の応用に関する定義を聴いていたところ、後ろからそーっと近づいてきたシンクががばっとエースの腰辺りに抱き着き、感触に驚いた。
抱きつかれたエース本人は背後からのいきなり抱きつかれた衝撃で机の上に上半身を殆ど突っ伏すような体勢になっている。しかも無駄に気配を消し切って近づいてきたもんだから、心臓的にもかなり良くない。

「んなっ…シン、ク離っせ!!」

どうにか起き上がり腰に回ったままのシンクの腕を引っぺがそうとするが、同世代の男子と比べ明らかに腕力不足のエースには女性でありながらパワフルなシンクに勝つのすら難しいことだった。

「シンクさん、そろそろ離したらどうです?」

この慌ただしい状況の中でもマイペースを崩さないデュースはエースの後ろのシンクを覗き込みながら「ね?」と言った。その時丁度、上の扉が開く音がしてそれから聴き慣れた声が聞こえてきた。

「何やってるんだ?」

次の講義の教科書を手近な机に置き階段を下ってくるのはマキナ。シンクにホールドされているため完全に振り向くことはできないが、横に立ち心底不思議そうな顔をするマキナをじとりと見上げた。

「マキナ……シンクをどかしてくれないか?」

「あっひっどーい!シンクちゃんがまるで邪魔者みたいな言い方ー」

腰に巻きついたままのシンクと疲れた様子のエースで言い合いをしている中、マキナは苦笑しているデュースを見、これは本気で困っているというよりは明らかにじゃれあっていると見た方が良いのだろうか。

「ねーねーマキナっちー。見て見てエースすっごく細いんだよ!!」

エースの身体を回り込み、反対方向から顔をのぞかせて言うシンクの目はキラキラと何故か輝いていた。
確かに。
エースはどちらかというと小柄な方で、華奢と言ってしまっても良い位だと思う。ただ流石にそれを本人に直接言うと不機嫌になるというのは、火を見るよりも明らかである。

武器が力をあまり必要としないものだから仕方ないのだろうが、任務の度に戦場で思う。こんなところにいたら折れてしまうのではないかと。
勿論女性陣やエイトなど、同じくらいの身長やそれ以下の体型の者もいる。だが常々マキナは心配していた。

「ま…あ、確かに」

そういうとエースが睨みつけてくるが、事実は事実だ。
ゴメン、といつもより低くなっているエースの頭をポンと撫でると、はたとするエース。苦笑するマキナとめをぱちくりとさせているエースを、シンクとデュースは首を傾げてきょとんとして見ていた。



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胡椒少々様リクエストでマキエです。
マキエ?マキ…エ?
微妙な感じになってしまいましたが、胡椒少々様、リクエスト有難うございました!!



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