零式 | ナノ

 開幕ベルは愉快な音色

イザA←マキ
If的な世界観




本日の天気は快晴。
空は青々とし、雲はゆっくりと流れている。

チョコボ農場の空気も同じで、時折ヒヨチョコボの鳴き声が辺りを和かに彩っている。一羽のチョコボが昼寝をしている小屋の柵に手をかけ、その様子をジッと見ているのはエース。
普段は背伸びをして大人のように振る舞っている彼も、ここでは年相応の表情を見せる。エースは童顔だから、そっちの方が自然だ、とはいつもここで談笑する男がいつも思うことだがそれを言うと絶対に拗ねられるから、あえて心に閉まったままでいるのだが。


「……」

起こさないようにしているのか、すやすやと気持ちよさそうに眠るチョコボを見て、柔らかく微笑むエース。

「今日も会ったな」

背後から声が聞こえ振り返ると、最近知り合ってよく話をする男。

「イザナ」

マキナの兄だそうだ。珍しく年上に対して心を開いたエースは、チョコボ好きという共通の話題も手伝い瞬く間に仲良くなった。

「チチリ今日は寝てるんだな」

目の前で寝ている赤みがかった毛色のチョコボを愉快そうに見るイザナ。チチリ、そういうチョコボの名前をやっぱり何度聞いてもおかしく思ってしまい、ついくすりと笑っていしまった。

「チチリって、マキナが付けた名前なんだよな?」

「ああ。やっぱり変だと思うか」

「いや…、ううん。やっぱりなんだかおかしいな」

弟のネーミングセンスの微妙さに苦笑するイザナ。つられてエースも笑うと、辺りはより一層暖かな空気に包まれる。

「クェェッ」

するといつの間に起きていたのか突然チチリが鳴き、驚く二人を尻目に呑気に欠伸を一つした。そしてエースに近づくと、頭を摺り寄せるようにくっつけた。

「起こしちゃったか?」

チチリを撫でるエース。雛の時から育ててきたのはイザナなのだが、エースのチョコボ好きを感じ取ったのかチチリはやけにエースに懐いていた。育てた自分より懐かれると、なんだか少し寂しい感じもするが。ふとエースを見ると、言動が早熟なせいもあり、年相応のその慈しみに満ちた微笑みが、弟に感じるようなものではなく、別の愛しさが込み上げてきた。弟よりも低い位置にある頭に優しく手を乗せる。柔らかめの細い金糸は指通りも良く、その感触を楽しむように何度も往復すると、居たたまれなくなったエースが控え目に手を払いのける。

「な、何…?」

朱がさした頬は白い肌に余計に目立つ。チチリの首に片手を埋め、今さっき撫でられた頭を整えると、イザナは変わらず陽だまりのような笑顔で。

「可愛いなって思ってな」

そう言い折角整えた髪をまた撫で崩すと、そのままエースの目蓋に口づけを落とした。突然の接近に目を強く瞑ると、薄い皮膚に伝わってくる唇の感触とイザナの体温。今自分は耳まで赤くなっていることだろう。唇が離れた後もまだ感触が残っているようで、目を開けることが出来なかった。

「クエッ?」

するとチチリが一鳴きし、首を高く上げ向こうを見る。それに目を恐る恐る開けてみると、向こうからやってくるのはイザナの弟のマキナ。

「あ、マキナ…」

「エース。それに兄さんまで」

「よっ、そういや三人揃うのって初めてだな」


三人が三人とも、互いのことを聞いて話してはいるものの、こうして直接三人が鉢合わせるということは何故か今まで無かった。マキナはイザナからエースと農場で会ったと聞いてから、最初はそうなのかとしか思わなかったが、段々とイザナから聞くエースの話を聞いていると、なんだか妙な気分になってきた。イザナから聞く限り、マキナの知らないエースの顔がかなりあり、同じクラスの自分よりも、何だかイザナの方がエースのことをよく知っているかのような邪推さえしてしまう。これを世間では嫉妬と呼ぶことぐらいは分かっている。分かっていたが…。

「エース、どうしたんだ?何だか顔が赤いけど…」

先程の兄の行動を見ていない訳がなかった。分かっていてわざと、さっきイザナが口づけを落とした目蓋を額から、節くれ立った指ですっと撫でた。

「っ…大丈夫。何でもないから」

混雑していた思考を何とかまとめ、マキナから何とか離れると、なんだか自分と居る時の二人とは違う態度に何が何だか分からず、チチリの方に顔を背けるとチチリの羽毛に顔を埋め、長めの溜息を吐いた。

(一体、どうなってんだよ……)

現実逃避にふけっているエースの横で、兄弟は自分たちの会話を進めていた。

「おーい、エース?」

「兄さん…」

思考が完全に別のところに行ってしまっているエースに聞こえないよう、マキナは小声で兄に話しかける。

「言っておくけど」

「マキナ」

マキナの言葉を遮り振り向くイザナ。

「俺達喧嘩ばっかだな」

そう言い笑うイザナにはたとするマキナ。いつも何かというが結局兄に敵わない。しかしここだけは譲れるものか。

「…っ、今度は俺が勝つからな」


本日、快晴。





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赤波様リクエストでパラレルイザA←マキです
イザナさんほんとエースに関しておいしいとこごっそり持っていっちゃってまいったまいった^p^
消化不良な感じになっちゃいましたがどうでしょうか…っ
赤波様、リクエストありがとうございましたー!!



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