「しっかしまあ、本当に面白そうな玩具を見つけたもんだねドルディー。」
「ますます独り占めしたくなっちゃったよドルダム。」
二人の会話でシュトーレンは勘づいた。自分の中ではまだ憶測にしか過ぎないが。
「…お前らがさっきから言ってる玩具って、「俺達」のことか?」
声が震えるが恐怖心は引いていた。もっと違う別の感情が次第に込み上げてきた。
「「そうだよ!」」
やはり、双子は息さえもぴったり合わせて答えた。
「僕ら玩具は大切に扱う主義だから安心していーよ!ね、ドルダム。」
「飽きても捨てずに「コワレモノ」として誰かにあげるから安心していーよ!ね、ドルディー。」
抑揚のある明るい声。意識が朦朧とした中でアリスは理解した。ドルディーとドルダムが終始口にしていた「玩具」は自分達のことで、あたかも構ってほしそうな態度は獲物を逃さないための演技だったということ。自分達と遊びたいのではなく、自分達「で」遊びたいということを悟ったアリスの心の虚しさといったら計り知れない。手を引かれた時、裏の裏など知らずまんまとついていった事を思い出すと余計にだ。一時的に助かったとして結局こうやって罠にかかって身動きの取れぬ状態。何をしているのかわからなくなってきた。
「ざけんじゃねえぞクソガキ!」
業が湧いたシュトーレンが声を荒げた。
「生き物は、玩具じゃねーぞ!!」
隙間から見えた顔はさぞ怒りに血相を変えていただろうに双子はそれを物珍しそうに眺めている。
「…やっぱり皆ああ言うんだ、ドルディー。」
「僕らには全然わからないね、ドルダム。」
二人して首を傾げた。また檻の方へと視線を移す。
「ねえ、僕らが玩具だって言ってるのにどうして君達が「そうじゃない」って決めつけるの?」
とドルダム。問いかけに答えようとなんとか冷静さを取り戻すもさっぱり思い浮かばない。
「玩具じゃないから…だよ。」
絞り出した答えに百パーセントの自信はなかった。
「ねえ、なんで生きているもので遊んじゃダメなの?」
今度はドルディーが畳み掛けて問い詰める。
「それは…。」
シュトーレンは早くもお手上げだった。返答で彼等を説き伏せるほど口が達者ではない。これ以上は無駄だと双子は深追いはしなかった。
「僕らからしたら、生き物なんて「自分から動ける」ってだけなのにね。」
ドルディーは剣の切っ先を眼中の中にいる自分そっくりの小さな兵士に向けた。戦闘再開の合図だろう。ドルダムもむしろ嬉々として刃を翳した。
「ま、いーじゃん。捕まえたらこっちのもんだし。始めちゃおうよ!」
俄然やる気が増した二人は楽しみのためにうずうずしてならない。今にまた始まりそうな争いはきっと先程より激しさを増すに違いない!
「くそ!…いつかはこれもどけてくれるだろうけど…。」
うっかり触れてしまえばどうなるか、腕の中で衰弱している少女を見ると嫌でもわかってしまう。どうすることも出来ず落胆に項垂れていたシュトーレンはアリスの右頬に手を添えながら呟いた。

「…こんな時、あいつならどうしたんだろう。」

それから数秒経った。鉄のぶつかる音しかしない空間、なんの変わりもない現状。待つしかない籠の中の駒鳥。
「…ん?気のせいか?」
シュトーレンは一瞬、軽い眠気に襲われた。この状況下ではあまりにも不自然と感じたが、それからは逆に酷く目が冴え始めた。
「体はのんびり屋だな。」
「自分から動いてる時点で誰かの道具でも玩具でもないわ!」
すると全く前触れもなくアリスが大きな声を上げ、シュトーレンは言葉にならない悲鳴とともに勢いよく後ずさった。危ない、後もう少しで背中が檻にぶつかるところだったのだから。アリスは地に落とされ頭を打ったが、それ以前に何事もなかったかのように意識もはっきり、ぴんぴんとしていた。 立ち上がる様は見ている方が清々しいと思えるほどだ。
「…まぁまぁ…私ったらさっきまで喋るのもしんどかったのに!今ならこの檻を蹴破ることも出来ちゃいそう!」
それだけは勘弁してほしいし、まず不可能だろうとシュトーレンは思った。
「なんだよアリス…吃驚しただろ。心配して損したじゃねーか!」
「あら、心配してくれたの?ありがとう。」
礼を言われるとは予測しておらず、耳が
真ん中からぺたんと折れて自身も黙りこむ(どうやらこれは照れを表しているらしい)。とはいうがアリスの方は真顔だ。







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -