異論はない。シュトーレンも割り切って一足先に進むアリスのあとに続いた。
「んわあああ!」
これは紛れもなくアリスの悲鳴だ。いきなり何かに足を引っかけ派手にすっ転びそのまま俯せに倒れた。
「大丈夫か!?」
慌てて彼女のそばへ駆け寄る。一方アリスは反射的に両手をついたので全身へのダメージは軽減され膝に擦り傷を作った程度で済んだ。
「たいしたことないけど…血が出てる…ん?縄?」
アリスの足元には一本の縄。これに引っ掛かったのは間違いない。その縄は地面の土の色とそっくりで、兵士が迷彩の服を着るのと同じ原理を利用しているらしく見事にカモフラージュしている。ただ謎なのはこの縄がなぜここに、どことどこを繋いでいるか。不思議なことに今はぴんと張ることなく軽くと緩んでいた。
「アリス!!」
突如シュトーレンが名前を叫ぶ。それが何故かを問う前に周りを黒い影が浮かんだ。更に黒い影が何かを疑う間も与えられなかった。
「レンさ、きゃああああ!!」
遥か頭上から、巨大な空洞状の物体が落下し二人を閉じ込めたのだ。これまでとは比べようのない地響き。外は半端ない土埃が舞うがこれは中にいる者にさほど影響はない。
「う…うん?」
「どういうことだよ!!」
外から見たら黒塗りの鉄格子で出来ている鳥籠といったところだ。一つ一つの隙間は頭すら出すことが出来ないほど狭い!刑務所で働く人は吃驚仰天、囚人は希望を木っ端微塵に砕かれるほど頑丈で、隙間はあれど隙が全くない。鳥籠と形容したがこれはもはや檻だ。
「あ、見てよドルダム。」
「ん?…あ、かかってやんの。」
一旦戦うことをやめ双子がこちらを振り向く。
「ちょっと!なによこれ!かかったって…、あっ、あ゙あ゙あ゙ぁぁぁぁ!!!」
感情任せに檻にしがみついたアリスの体は雷に打たれたかのように激しく跳ね上がり数秒膝を折ったまま停止し、後ろに力なく倒れる。シュトーレンは地に着く前に両腕で受け止めた。かろうじて意識はあった。
「あははは、逃げようとしても無駄だよ!内側に触れたら電流が流れるようになってるんだ!」
「「駒鳥の葬式(クックロビン)」は僕らイチオシの最強トラップだよ!どうなってるかは秘密なんだ!」
自慢げなドルダムとドルディー。喋れるシュトーレンはすっかり怖じ気づいて歯を震わせている。憐れな光景に二人は笑いをなんとかこらえながら続けた。
「…まーそう怖がらないでよって、目の前であんなの見たら無理か。」
「隙間を埋めて毒ガス噴射することも出来るけど怯えないでね…あっはは…。」
ドルディーの方はしまいには笑い声を漏らしていた。

「…なんで、俺達をそこまで、して…?」
なんとか口を動かすことが出来たがなんとか細いことか。離れたところにいるドルディーとドルダムにはとても届かない。
「なんてぇ〜?ぜっんぜ〜〜ん聞こえないんですけどぉ〜〜!!くははは!」
わざとらしく耳わそばたてるドルダム。
「ひゃははは…やめてあげなよ。大丈夫!電流も毒ガスも死なない程度に調節してあるから!」
とうとう笑い声をおさえることもやめたらしい。これほどまでに人を不安にさせる大丈夫などあるのだろうか。
「…あ、私…もう、ほんとう…。」
「え!?なんて!!?」
アリスの呟きは彼の聴覚でも聞き取ることができない。双子は彼らが言ってることはどうでもよかった。






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