アリスの今の心境は「呆れ」と「困惑」が合わさったなんとも不思議なもの。つまり何が言いたいかといえば、「もう行っていいかしら?」の一言。しかし、それが中々口に出来ない状況下にぽつんと置かれていた。
「埒が明かないね、ドルディー。」
「僕らお互い様だね、ドルダム。」
二人が顔を見合わせてうんと頷く。
「あら、案外諦めが早いのね。」
は呟くものの、実際にこれがアリスにとって一番望ましい流れなのだ。余計に悩む必要もなく、やっとこの一言が言えると思うとアリスの心がふっと軽くになった。
「それじゃあ私達、ここで失礼するわね…。」
「おい、待てよアリス。」
呼び止めたのはまさかのシュトーレンだった。
「どうしたっていうのよ。アップルパイでもご馳走するつもりなの?」
それに対し首を横に振る。
「違う。仲直りしたところで、俺達と遊んでほしいのは一緒なンじゃないのか?」
すっかりアリスは忘れていた、のではなくあえて触れなかったのに何故こんなことばかり彼は覚えているのだろうと些か疑問に感じたが、答えはシュトーレンの目を見てすぐにわかった。単に自分が遊びたいだけなのだ。
「もうっ、置いていくわよ!」
アリスはまるで幼子を叱りつける親の気分だ。シュトーレンが横目で睨む。
「さっきだれかさんの寄り道につきあってあげたんだけどなー。不公平はよくないよなー。」
「うっ…、それは…。」
シュトーレンの記憶力はアリスを一気に不利に追い込んだ。元はといえばアリスがあの扉に足を踏み要らなければ穴に落ちてここに来ることも、シュトーレンがうっかり体に穴を開けることもなかった。
「そ、れ、は?」
彼は伊達にバカではないみたいだ(彼が主役の物語での言動と是非見比べていただきたいほどだ)。アリスは言葉に詰まる。
「はぐぅ…っ!」
ここで「だ、か、ら?」と言い返す傲慢さはアリスにはない。だが、承諾するには少なからず抵抗があった。
「うーん…。これでおあいこなら…。」
悩みに悩んで渋々結論をくだそうとした。

「不公平は。」
とドルダム。
「よくない。」
とドルディー。ハモってないが考えていることは同じだと伺える。
「そう…よね。じゃあいっそ、疲れを忘れちゃうぐらい遊んじゃおうかしら。」
こんなところで孤立するのもくだらない。どうしても嫌なことではないなら、付き合うことにした。
「あーあ、せっかく今ので玩具を独り占めできると思ったのに!」
「でも僕はドルディーのものを、ドルディーは僕のものを奪ったってところは公平だよね。」
なにやらまた、不穏な空気が流れ始めた。
「こうなったらもうアレしかないね。」
とドルディー。続いてドルダムも頷いた。
「勝った方が玩具を独り占めできるんだよ。」
仲直りしたと安堵したのも束の間、二人は見えい火花を散らしていた。はたから見ればそんな気配は全くないが、隻眼には静かな闘志を燃やしていた。
「まあ、呆れたわ!」
アリスは心底うんざりした。
「なんで男の子って喧嘩をするのがこうも好きなのかしら!謝ればいいだけの話なのに!」
確かにアリスの言う通りだ。おそらく今ならば普通に仲直りできたはずなのだ。







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