「じゃあ中に入ろーよ!」
ドルダムがアリスの手を、ドルディーがシュトーレンの手を引っ張りだす。中とはつまり、彼らの家へ招かれているということ。一体なにに対してそれほど警戒しているのか分からないけど、安易に誘いに乗ってはいけない気がした。
「いっぱいおもちゃがあるよ!」
「本当か!?」
中身がとことん幼いシュトーレンが食いつく。子供が遊ぶ玩具で満足するのだろうかとアリスが少し不安になった。
「どんなのがあるかは入ってからの秘密だよ。」
とドルダム。
「新しい玩具が増えたからまた遊べるよ!」
とドルディー。二人に引っ張られるがままに足がついていく。そんな矢先だった。地面でガラスのようなものが割れる音がした。
「いまのはなあに?」
視線を下げると、ドルディーの足元には、子供の手のひらに収まるぐらいの小さな赤い水晶体が無惨にもただの破片と成り果てていた。
「水晶玉…?」
二人は手を離す。アリスがひとつを拾い上げた瞬間、破片が触れられることを拒むかのように強い静電気を放った。
「きゃあっ!」
指先に痛みが走り、うっかり落としてしまう。
「占い師がよくテーブルに置いてるあれだな!」
と何処で占い師がテーブルに置いている光景を目の当たりにしたのかわからないシュトーレンは触れようともしなかった。
「でもその理屈じゃあ二人が実は占い師ってことになるわ…そうなの!?」
占いに興味ないアリスは二人のギャップに興味をそそられた。
「違うよ。これは人工魔鉱物で1日だけ全く違う姿に変身できるんだ。」
とドルディー。笑顔が若干ぎこちない。冷や汗が滲んでいる。
「なにそれ!すげえな!!」
「あははは…うん、すげえよね…。」
シュトーレンが目を輝かせる。しかしアリスはだんまりを決めた。むしろ彼女の対応が正しかったのかもしれない。ドルディーの隣から殺気に近いものを感じる。
「…ねえ、ドルディー。これ、僕の分だよね?」
声の調子は出会った時と変わらない。笑顔のままだが、目が明らかに笑っていない。
「そうだよ!ドルダムったら風呂場に置いたまんまだったから。」
「別に置いたまんまでいいじゃん!」
とうとうドルダムは血相を変え声色も荒げる。
「え、だって風呂場に置いてたら忘れちゃうじゃん…。」
ドルディーにあとはい。
「毎日入るんだから忘れるわけないじゃん!てか確かそれを置いたの三日前ぐらい前だし!渡してよ!」
畳み掛ける如く反論に出る。しかし、ドルディーにも言い分ができた。
「三日前…て、忘れてる!!!」
三日もなくなったことに気がつかなかったみたいである。ちなみにドルディーの方はただの言い訳だった。ここでポケットから落とさなければずっと言わなかったに違いない。
「ていうかドルダムだってこの間僕の楽しみにしてたアップルパイ一人で全部食っただろ!」
話が急展開を迎えた。
「え、あれ僕に買ってきてくれたんじゃないの?」
「違うし!!」
気まずそうな顔でアリスが間に入ろうとする。
「あ、あの〜…。」
自信満々なのはシュトーレンただ一人。
「俺、アップルパイなら得意だぞ!」
だが二人は全く聞いちゃいなかった。







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