すると突然、二人が空いた手を差し出した。
「え?なに?」
アリス達が頭に疑問符を浮かべる。
「「君達踊るのは好き?」」
期待の眼差しで見つめ無邪気に微笑む、まだ幼さの残るあどけない顔が二つ。このような推しにはアリスはめっぽう弱かった。妹が甘えてきた時は責めるのが大変だったほど、年下に甘えられるのに弱かったのだ。だが、断るところは断らなければと自身を責める。
「き、嫌いじゃないけど…でも、私うまく踊れなくて…。」
「俺は大嫌いだぞ!!」
まさかのシュトーレンが堂々と誘いを拒否した。意外にものりそうと思ったら嫌いを通り越して大嫌いだった。
「でも、俺こうみえてコサックダンスは踊れるぞ!」
一人で踊るものではないか。それぞれがばらばらに中腰で膝を曲げたり伸ばしたりしても仕方ないだろう。けれど、彼がはっきりと断ってくれたのでアリスはおおいに助かった。
「失敗したね、ドルダム。」
「楽しく体力消耗作戦失敗したね、ドルディー。」
途端になにやらひそひそ話を始めた。
「どうしたの?」
ドルダムとドルディーは不審に思われたと察し、慌てて作り笑いを浮かべる。
「あはは、なんでもないよ。」
「ほんと、なんでもないよ。」
見たところ、怪しさが極まっただけなのだが。

「そう。…じゃあ、私たち行きたいところがあるからそろそろおいとまするわね。さようなら。」
「じゃーな!ちびっこ!」
アリスとシュトーレンはこれ以上ここにも彼等にも用はなかった。別れの挨拶だけして行く先のわからない道へと進もうとした。
「「待ってよ!」」
二人が声を揃えて呼び止める。まだ一歩しか前進していない一行がなんだと振り向いた。お互いの肩を組んでいた手もほどいている。
「僕、パパもママもいないから寂しいのっ!」
と、ドルディー。
「二人で出掛けたらお家誰もいなくなっちゃって不安なのっ!」
続けてドルダム。本当にこの家には、二人しか住んでいなかった。アリスからしたら想像のできない世界だ。子供だけで生活していたり、一国の王女を担っていたり、元いた世界での自分がどれだけ不自由ない毎日を過ごしていたかを思い知る。
「じゃあ片方留守番すればいいじゃねーか。」
シュトーレンは、根本的な暮らし方と考え方がまず違ったようだ。アリスは二人に潤んだ瞳で懇願され早くも押されかけている。
「そうしてきたもん…。」
「でも、たまには僕ら揃って誰かと一緒に遊びたいもん…。」
ドルディーとドルダムがアリスの手を掴む。
「う…うぅん。で、でもぉ…。」
仲間を一別して助けを求めた。今度ばかりはやんわりと断ってほしいものだが。シュトーレンは察知した。仲間である自分の同意も得る必要があると。そうなれば迷いはない。
「しょーがねーな…。ちょっとぐらいなら遊んでやってもいいぞ!」
とノリノリのシュトーレン。その笑顔でなんだか花が咲きそうだ。「違う!」とアリスは心の中で叫ぶ。残念ながら、事はアリスの望んでもない方向に流れ出した。






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