ドルディーの足が、地に長く垂れ下がった耳をおもいっきり踏んだ。

「んぎぇえええええ!!!!?」
「「うわああああああああ!!?」」
痛々しい絶叫とともに、気を失っていたのが実は嘘だったみたいに勢いよく飛び起きる。踏まれた耳は真ん中で二つに折れている。ドルダムとドルディーの双子が慌てて距離を取った。

「痛い!痛い痛い痛い!!さっきよりずっと痛い!!いっ、いたい!!」
首を横にぶんぶん振ったり耳を触ったりとシュトーレンは大分混乱していた。彼は耳と尻尾が弱点である。
「ん…ん〜っ、ん?…明るい…?」
一方アリスは急に暗いところから明るい場所に出たため、外がやたら眩しく目を開けるにも時間がかかった。そして、ゆっくりと体を起こす。
「いって〜〜〜〜…。」
側には頭をおさえて目尻に涙を浮かべたシュトーレンがいた。刺されたり踏まれたりとこの短い間で散々な目に遭っている。
「レンさん…、あ!レンさん!体の方は大丈夫なの!?」
見た感じは傷ひとつ無い。
「大丈夫って…見ればわかるだろ。脱がなくちゃわかんないか?」
「いいです!!」
顔を赤くしてアリスは即答した。下手したら新たに傷を増やすはめになりかねないからだ。
「もう、なんだか色々ありすぎて頭が痛くなってきたわ。」
確かに、彼女もまた一度に様々な事を経験した。裏切りや死んだはずの仲間が生き返ったり今いる仲間が突然死んでまたすぐに生き返ったり穴に落ちたと思ったら違う所に着いていたりと、いくらある程度の非常識に耐性があったとしてもまだ14歳の子供には体力も同時消耗するぐらいにしんどいことだろう。しかし彼女は休みを取るわけにいかないと自分に言い聞かせた。
「…それはそうと、どこなの?ここ。」
アリスがふと建物に気づき、そちらの方を見遣ると、まず目に飛び込んできたのはどぎつい色の屋根だった。
「まあ!なんてエキセントリックな家なのかしら!」
シュトーレンが腕を組んで唸る。
「う〜ん…青は微妙だな。壁の色とあってない!」
同意を得ると思ったらアリスは違う視点ら屋根は青と推した。
「でも逆に新しくていいじゃない。」
「えーでもー…。絶対赤だぞ!」
まるで子供のように駄々をこねるみたいに自分の意見を通そうとするシュトーレンに、対してこだわりもなかったアリスもついむきになって反論した。
「なによっ!貴方みたいな普通に頭が凝り固まった人ばっかだから毎日がつまらないのよ!」
いきなり規模が大きくなってしまいシュトーレンは言葉につまりかけた。
「なんだよなんだよ!お前みたいに青色が似合うのなんて中々いないんだぞ!」
「ああいったらこう…え?」
アリスの言葉が止まる。嘘か本当か、口から出任せを言っただけなのかわからない言葉にまさか照れてしまうとは。

「「ちょっとそこの君達。」」
二人の声がぴったり重なって同じことを口にした。家の隣、ドルディーとドルダムが肩を組んでいる。随分と不貞腐れていた。
「人の家をバカにしたね。君達の家が燃える呪いをかけるよ。」
とドルディー。
「人の前でいちゃついたね。恋人のいない人の前でいちゃついたら爆発するよ。」
とドルダム。
「爆発したら燃えるし燃えたら爆発するでしょ…そもそも爆発しないし、いちゃついてないし、恋人いないことを暴露しちゃってるし…。」
気になるところ全てにアリスのいたって冷静なツッコミが炸裂する。
「ドルダム、後で覚えてろよ。」
「僕は悪くないよドルディー…。」
早くも呪いの矛先が相方に向かった。勿論、爆発はしない。







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