「きゃははははは!!魔法のうるぇはまだまだおとろえてないねー!」
どこからか楽しそうな少女の声がした。スネイキーは顔を勢いよく左右に振った拍子に地面に音をたてて落ちたのは一匹の蜥蜴だった。
「お前は永遠に眠ってりゃよかったのに…ハーミー…。」
ぶつくさに文句を垂れる。ハーミーと呼ばれた人物が空間の中から姿を現した。
「やーん、スネイキーきゃはは、んー…あたちと同いぐらい寝てたはずなのにちびっちゃいまんまねー。」
こちらもまたスネイキーとはまた別の民族風の衣装を着ており、露出された腕や足に赤い模様が浮かんでいる。髪は半分に、緑と白にわかれたツートン。身長は両者ともそんなに変わらない。
「やれやれ、次会ったときは地獄かと思ったのだがまたこうして生きてる姿を見れるとは…。」
ハーミーのあとにまた一人続いて出てくる。緋色の髪を上に束ね和服を着た大人の女性だった。
「あ、スチェイムおばさん。」
「南風(ミナミ)である。ババアではない!!」
スチェイムの手に持っていたキセルの先端がスネイキーの額にごつんとぶつけられる。
「お前らが何か言うたび面倒事が増えるから黙っておれ。…さて、鍵の気配を感じたが。」
揉み合うスネイキーとハーミーを押し退け、アリスの方へヒールを鳴らしながらゆっくり近付く。赤いアイシャドウで縁取られた瞼が目力を一層強めており、燦然とした金色の瞳ま見つめられるだけで勝手に身動きすることを封じられたような感覚が体を襲う。おまけに口元を布で隠しているせいで不気味さも醸し出している。
「どうやらお主の目には人の姿しか見えておらぬようじゃな。わっちのかけた罠に小娘は見事かかっておる。しかしそんなお主が鍵の力を使いこなせるっ…んん?」
ヒールが食い込む。明らかに土地の地面ではない。鬱陶しそうに見下ろしたらまさか瀕死で誰かが倒れているのだ。ぎょっとしてそのまま結局踏み越えた。そしてまた見下ろす。
「なんじゃこいつ…兎の半獣などここにもおったのか。死にそうではないか。」
赤く腫れさせたスネイキーが自分が仕留めたくせに他人事のように説明した。
「晩餐のメインディッシュにいいかなと思ったんだけど。」
「うえーっ、うさぎってビミョー!捨てよーよこぇー。」
ハーミーが引き気味に口を押さえる。
「お前は…んで、こやつは誰だ?」

「私の仲間よッ!!!」
怒りに震えたアリスの声が闇に谺し、三人の茫然と見開いた視線は一斉に彼女に向けられた。
「黙って聞いてれば何が晩餐よ!ふざけないで!挙げ句の果てには捨てようですって!?人の命をなんだと思ってるの!?」
嗚咽混じりに訴えかけるその少女の表情は、怒りを超えたもっと高度な感情が入り交じっている。
「人の命ぃ?ひゃははははは、おかしなこという―…。」
ハーミーの言葉を遮って、スチェイムは袖についている札を剥がせばそれを何かか細い声で呟きながら真っ二つに破いた。それが意味することなど誰にもわからない。
「空いた穴を塞ぐことも出来ぬとは、まだまだじゃ。」
ちぎれた紙はひらひらあ動かなくなった彼の背中に舞い落ちる。次の瞬間、空中に紅い光を帯びた複雑な紋様の描かれた魔方陣が突然展開され、すぐに収縮して無に還った。あまりの眩しさにそこにいた者は皆目を瞑る。
「…………ッ!!」
瞼の奥からも強い光が射し込む。れも引いてきてやっと目を開いた。当然、変わらない現実。倒れたまま…と思いきや、服にまで滲んだ血の染みが無くなっていた。更に、今の瀕死が嘘みたいに跳ね起きた。ついさっき体が貫通されていたというのに腹部には穴どころか傷ひとつもない。







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