「先に…先に言えよ!!」
シュトーレンの苛立ちの言葉にドルチェは
「今気づいたんだけど。」
さも当たり前のごとく返した。
「そのなんとかの鍵ってやつでどうにかならないの?ちょっとは頭を使ったら?」
いちいち癪に障る言い方だが先ほどの力を使いきったせいで呼吸と同じように吐かれる毒舌に応対できる気力すらなかった。
「そっか。じゃあ穴はどこだ?こいつをさす鍵穴…。」
見渡してみてもそのようなものは何処にもなかった。
「鍵穴がないのにどうやって開けるんだよ!」
当然のことにやきもきとして叫ぶ。まだ体力が十分回復していないアリスが低い弱々しい声で呟く。
「いままでその鍵を鍵穴にさしたことないでしょ…。」
それにハッとした所で一向に反応を示さない鍵はただの鍵であり、「方法」がわかはない限りはどうすることもできない。
「でも…、どうにもこうにも出来ないぞ?」
打つ手がなくシュトーレンが扉を睨む。アリスも諦めの気持ちが強くなった。
「はぁ…こういうのって、なんだっけ。宝の持ち腐れかしら。あ〜気になるなあ〜!…ん?」
やけくそに大きな声を上げるアリスがすぐにあるものに着目した。
「私も今気づいたわ。これは、なあに?」
彼女の目と鼻の先にある、扉にうっすらと浮かんだ文字はこう書かれていた。


――――――

我ノ 名ヲ 呼ベ
「ズュビエカテケ」

「      」
我ハ 常ニ 前ヲ進ム者


―――――

「読めるか!!」
後ろからのぞきこんだドルチェは即答だった。
「読む…呼ぶ…んー…ズッユ…ジュビェカッ…ジュベッ…ズビェ…。」
シュトーレンは一人で苦戦している。
「もしかしたら、これがこの扉開けるための呪文かもしれないわ。」
真剣な表情で顎に指を添えながら思考を巡らせるアリス。
「ちゃんと噛まずに言わなきゃだめなのかな?ズユ…ズユビエテェク…。」
「中々難しいなオイ…ジュビェ、ジュッテーム…。」
ドルチェも挑戦してみたはいいものの誰かさんより酷い滑舌の悪さ。シュトーレンはとうとう違う意味の言葉をぼやいていた。そんな二人のやり取りにツッコミをいれたい衝動を抑えつつ考えを練っていたらひとつの答えに辿り着いた。
「そうじゃない…この文全てが答えを導き出すためのヒントなのよ、きっと。」
アリスいわく、この名前自体を糧に答えを割り出すといったもの。しかしながら二人にはその理屈をわかってはもらえなかったみたいだ。

「個人的に、下の文が引っ掛かるわ。何か隠されてると思う。やじるし、てことはこの読みにくい名前を決められた法則に従って変えたものが答えなんだわ。」
なんとなく意味が伝わったドルチェが「へぇー。」と感心する。
「ま、確かに下の書く必要ないからね。でも、だからって話なんだけど。」
そうだ。ヒントもまだ曖昧なままなのだ。








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