アリス達は足を止めた。正しくはアリスが突然足を止めたので皆も止まったのだ。
「ねえ。ドルチェさん。レンさん。あれを見て。」
道からはずれた方向を指差す。そこには見るからに不気味な石造りの扉が空間の中に異様な存在感を放ちながら立ちそびえていた。壁もないところに扉、それだけならもう慣れっこだった。彼女の好奇を駆り立てたのは「なんで」ここにあるのか、「どこへ」繋がるのかという未知への謎である。
「おう。扉…だな。ん?う、うわー、壁がねえ所に扉がある!」
そこまで淘汰の国ではこの光景が馴染んでいるのか。シュトーレンがわざとらしい演技をする。
「この国じゃあ結構見かけるよ?」
ドルチェは対して関心がないみたいだ。は演技がかなり浮いただけだった。
「は、はずかし!!」
長い耳をぎゅっと下に引っ張って下を向く。
「そう、扉よ。じゃああの扉はどこへ繋がってると思う?」
耳から手を離したシュトーレンとドルチェがお互い顔を見合わせて首を捻る。
「さあ…知らねえな。」
「僕もあれは初めて見たもん。」

ようは誰もあの扉の向こうにどんな世界が待っているか知らない。そして、これほどまでに一人のお転婆な少女の興味をそそるものはない。
「まあ素敵!だあれも知らない世界があるかもしれないんだわ!うふふ…これは行くしかないわね!」
引き気味のドルチェがそっと彼女から手を離す。アリスは両手をあわせ嬉しそうに二度跳び跳ねたらシュトーレンの腕を掴み乱暴に揺さぶった。
「わ、うわわ、どうしたんだよアリス!疲れてるのか!?」
あまりの変わりぶりにそう思わざるを得なかったがむしろアリスの疲れはおもいっきり吹っ飛んでしまった。
「ねえねえ!…ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから扉を開けるだけ!開けるだけでいいからその立ち寄ってもいいかしら?いいわよね!?」
質問から確認に早変わりした。だが純粋な輝きに満ちた目でみつめらたらさシュトーレンは何も言えない。こういうのにはめっぽう弱い上に自身も気にならないといえば嘘になるからだ。
「俺はいいけどあんまりゆっくりしてられねーんじゃねェの?だって…って、おい!」
まだ話の途中でアリスは扉の方へ駆け出した。茫然とするシュトーレンの隣をドルチェが興味無さそうな顔で通りすぎる。

「人の話は最後まで聞かなくちゃいけないンだぞ!俺も行く!!」
置いていかれぬよう、半ば自分もその先を見たくて、シュトーレンは慌てて二人のあとを追いかけた。

「…頑丈そうな扉ね…。」
冷たい石造りの扉。試しにアリスが全身の力を振り絞って扉を押す。
「ん、ん〜〜〜〜〜…っ、こなくそ〜〜〜〜!!!」
「びくともしないね。」
か弱い少女一人の力で簡単に開きそうにはとても見えない扉。ドルチェの辛辣な言葉が必死なアリスの心に刺さる。
「手伝う!」
見兼ねたシュトーレンがアリスと並んで加勢した。
「ん゙っ…ぐ、こんのやろ〜〜〜〜!!」
「開け〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
男性の力が加わっても隙間すら見えない。
「はぐっ…ゔっ、んんっ、ふ、二人が…ダメなら三人…!!」
シュトーレンも力んでいては話す方に神経が行き届かない。他の誰でもない三人目は白けた顔で傍観してた。
「いやいや、無理でしょ。」
あっさりと断った。更に続ける。
「この扉さ、物理的な力で開くんじゃないと思うんだけど。」
その言葉に二人は力任せの行為をやめた。息も荒く、アリスは膝に手をついて項垂れていた。









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