鍵が光を灯しだす。それだけが、これから何かが起こる前兆を示唆しているのだから。
「それ…ただの迷子がなんで「そんな危険な物」を持っとるんや…。」
危険な物と称したフェールはゆっくりと後退り、声もやや震えている。更に、彼の足元の光が徐々に増していった。
「これはその…えっと、えーっと…。」
「すごい!あいつのまわりもピカーッてなってるぞ!」
説明すればきっと長くなると必死に脳内で言葉を整理するアリスの腕をぐいぐい引っ張りながら自身の目も負けんぐらいに耀かせるシュトーレンは(よく言えば)神秘的な光景に興奮している。そんな光り輝く中でぎこちない笑顔を取り繕ったフェールは違う意味で浮いていた。
「お嬢ちゃん…いや、アリス。 突然の交渉でなんやけどその鍵をこっちに渡してくれへんか?」
「え、は?イヤに決まってるでしょ。」
一瞬で我に返ったアリスが即座に断る。想定内のフェールは出来る限りの営業用スマイルで引き続き土壇場の交渉に出た。
「あんたらが持っとった所でどうしようもない。せやからこっちが預かるだけや、なんもせえへん。そのかわりあんたらに少なからず需要のあるものをこっちで…。」
「イヤだって言ってるじゃない!これはフィッソンさんに返さなくちゃいけないんだから!」
アリスは頑なに拒否した。彼女の責任感が打ち勝ったのだ。需要のあるものがどんなものかによるが。
「リンゴくれたらやるけどうふっ!!」
女の子の渾身の力を込めた拳がシュトーレンの鳩尾に直撃する。あやうく果物一つで人の私物が手に渡る所だった。

「あっちゃー…さっきのやつ残しとったらよかったなあ。アリス、こっちが何あげるゆうてもほんまに渡す気がないんやな?」
悶絶するシュトーレンの背中に少年は怯えた顔で身を潜める。最終確認。アリスは強く首を横に振った。
「あなたがどんな目的だろうと、この鍵がどんなものだろうとフィッソンさん以外には渡さないの!」
迷いなど、あるはずない。
「交渉破談かぁ。ま、何事もそう簡単に行かんわな。しゃあないしゃあない…。」
肩を竦めて深いため息をつく。あっさりと諦めてくれた様を見るとアリスもさすがにむきになりすぎたのではないかと自分を恥じた。
「ごめんなさい…言い過ぎたかもしれないわ。でも、これは。」
足元の光が眩い白い閃光なり、刹那の間に消えたそこには、身長が3メートルはある黒い靄を身に纏った異形の物が三匹いた。離れてても全身で感じる禍々しい空気が辺りを包み込む。それぞれ、違う形をしているがなにせ真っ黒なのでさっぱりわからない。

「な、な…なによあれ!!」
急な展開と、見たこともない歪な化け物に身の毛がよだった。シュトーレンも目を点にしている。少年は気絶する寸前だった。
「悪いけど、お前の持っとるそれがこいつらを起こしたんやで。やけど、お前らじゃあどうすることもできへんやろ!」
フェールの言葉に反応するかのように、異形の物が低い唸りを上げた。







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