―――――――……


三人は相対の国を繋ぐ要である中央駅に辿り着いた。レンガ造りの大きな建物は一見すると駅とはわからない程しっかりしているもいざ中に入れば、それぞれの行き先を示す看板がかけられた柱と扉が奥へ奥へと並び、荷物を持った人々が沢山行き交っている。途中で喫茶店やお土産屋、ベンチもあるので気軽に休むことも出来る。
「わぁー…すごい!」
アリスが感嘆の声を上げる。
「僕もこのような大きな所は初めて来ました…。」
しかしエヴェリンはまた後ろのリュックが通行人の邪魔にならないかとばかり気にしてそれどころではなかった(しかし彼も通行人の荷物にぶつかりつまずきとさぞ大変な目に遭っている)。
「お土産屋かぁ〜…でももし買ったって、どうお話すればいいかしらね。」
家族や友達に対の国をどう説明すればいいかが難問だった。
「レンさん、あそこに「にんじんフラペチーノ」があるわよ。」
隣にいたはずのシュトーレンの姿が見当たらない。焦って人混みの中から探す。はぐれたりしたら大変だ。
「すっげえええええ!!」
そこから動くほどもない距離にいた。人を掻き分けてようやく見つける。たいそう喜びに満ちた表情だ、いったいそんな嬉しいことでもあったのだろうか。
「どうしたの?」
「こいつらタダで飲み放題だぞ!」
洋風の喫茶店の前で困った顔をしている店員が持っていたのは白く新しいプラスチックのプレート。その上には茶色い液体が入った小さなコップが数個並んでおり、「私をもっと飲んで!ウコンコーラ登場(こちらはサンプルです)」と書かれた紙が貼ってある。喫茶店から出しているものなら大変ナンセンスだ。
「ここにサンプルって書いてあるじゃない。」
アリスが紙を指差すがシュトーレンは「?」と言わんばかりに首を傾げる。これでは試食だと説明してもきっとわからないだろう。
「それよりアリスも飲んでみろよ!なんかよくわかんねー味だったぞ、コレ…えっと…う、ウン…。」
「失礼しましたっ!!!」
顔を真っ赤にしたアリスに手を引かれ、人だかりからなんとか抜けた。振り返ったら、おしまいな気がしながら。
「バカ!信じられない!私もうあの喫茶店の前通れないじゃない!」
巻き添えを食らった哀れな彼女の怒りも彼の鉄壁の無知はそれぐらいで動きはしない。
「なんでだ?」
「…………はぁ、もう、いいわ。」
やるせない気持ちが込み上げ溜め息となって外へ吐き出された。
「あら?そう言えば…エリンさんは?」
気づいたら今度はエヴェリンの姿が消えていた。まさか彼とはぐれるとは思ってもいなかった。自分達が動いてもついてくるか、少なくとも誰かさんのように興味本意でどっか行ってしまうのは考えられない。
「あいつ、空気だって言ってたな。」
本当に空気となってしまったのか。
「んっなわけないでしょ!…もう、次から次へと!」
苛立ちを露にしながら、忙しく首を回す。あの大きなリュックはすぐに見つけられる自信がある。

「ダメだわ…人がいっぱいでわからない!駅員さんに相談してみましょう。」
それに抗議を立てる。
「呼んだら気付くかもしれないぞ!」
「……!!」
でも、あまり目立つことはしたくなかった。提案したシュトーレンのおかげで散々注目を浴びてしまったからだ。見た目の特徴を言えばなんとかなるだろう。







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -