アリスが咄嗟にシフォンの鳩尾に手を回して支えた。
「シフォンさん!疲れているのは確かだわ。それ以上動かないで。」
精神面でも疲労が溜まっているようだ。出来るだけ早く彼を安静にさせるのが最優先だ。
「宿屋に運びましょう。引き返すことにはなるけど、いいわよね?」
彼女の問いかけに二人は頷いた。シフォンは皆の心配をよそに鉛の如く重い足で時間かけて立ち上がる。
「前へ進むのなら邪魔はしたくない。…宿屋なら把握している…。」
足はちゃんと立っておらずちょっとでも押したら倒れてしまいそうだ。
「もしかして…お一人で行かれるつもりですか?」
エヴェリンの問いに小さく頷く。
「ああ。数分、鈍った足を動かさないとね。僕は大丈夫さ…。」
小さな手が袖を掴む。すぐに誰かわかった。
「大丈夫…なわけないじゃない。今にもそんな、倒れそうな足をして!」
必死に止めようとするアリスの頭を、傷の入った大きな手で撫で、どこかぎこちない笑みを繕う。
「歩いているうちに慣れるものだよ。…何事も、そんなものだ。」
不自然な笑顔に込み上げるものがあったアリスは、背を向ける彼まで止めることは出来ず手をだらしなく下ろした。

「あ…あ…えーっと、なあシフォン…。」
別れを感じたシュトーレンが口を開くも言葉が浮かばなかった。
「僕も言いたいことなら山程あるが、それはまた会ったときでいい。…今はそうだな。」
振り返ろうとする。でもやめた。
「皆、元気でなによりだ。それで少しだけ救われたよ。」
そうとだけ言い残し、覚束ない足取りでふらふらとアリス達が歩んできた道を辿るように去っていく。
「シフォンさん…。」
心配そうに背中を見届けるアリス。
「…よく知らねーけど、俺もだぞ!」
傍らで、再び仲間と出会えたことの嬉しさでいっぱいのシュトーレンは元気よく手を振った。

「……二人は、何者なのでしょうか。」
と、エヴェリンは一人誰にも聞こえぬよう小さな声で呟いた。



シフォンの背中が遥か彼方へ消えて行くまで見届けた後、三人は相対の国を繋ぎ会わせる役目を持った場所である中央駅へと向かった。













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