「ぎゃあああああああ!!!」
「しまぁぁぁぁあぁあ!!?」
二人は絶望の叫びを上げる。お互い思ってることは一緒、「言わんこっちゃない」。

「うわっ、わっ…なにこれ俺掴まれたの?」
確実に獲物と化したシュトーレンはやっと自分のおかれた状況が危機的なものだと理解したが、まだ何されるかを全く想像出来ない。
「掴まれた?捕まったのよ!」
「ほんとか!とりあえず抜けないと…。」
アリスの言葉を耳にしても特に慌てることない。 胸部にあたる所に巻き付いている触手からもそもそと力ずくで抜けようとする。が、びくともしない。
「ん〜…、ぬ、抜けないぃ…俺こいつに好かれたのか?」
「バカおっしゃい!エリンさん、刃物みたいなものないの!?」
思わず言葉遣いもおかしくなる。急かされたエヴェリンはリュックを開けてひたすら中身を一心不乱に取り出す。しかし、太刀打ちできるようなものが中々出てこない。

「離してくれたら俺も好きになってやるぞ!」
一方であっちはあっちでなにやらわけのわからないことを言っていた。
「ナイフ…ああ、そんなもの見つかった所でぼ、僕には…!」
「まだ見つかってないじゃない…男の子なのに情けないわね!」
だが半混乱に陥っていた彼は周りの声も音も聞こえていなかった。生活用品が散乱している。
「どわああああああぁ!!?」
半ば放置しかけていたシュトーレンが絶叫を上げたものだからアリス達は顔をあげて見たものは、触手(ここで言っておくが枝である)に巻き付かれたまま遥か地面から離れた大きな葉の上にぽつんと立たされた彼の姿だった。
「あ…あぁ…く、食われる…この世は…弱肉強食…。」
手にビニール袋を握ったままおっかないことを呟くエヴェリンはもう諦めていた。アリスも足が竦んで動かない。
「なあ、そろそろ離してくれよ。俺こんな高いとこから降りれないぞ!」
いつになれば彼に危機感は芽生えてくれるのだろう。
「レンさん!!」
「あ!おーいアリス!ちっさくなったな!」
振り向いて大きく手を振った。シュトーレンは全く気付かない。ちょっと目をはなした隙に彼は捕食されかけていることを。化け物は巨大な「口」を開く。

「――…ツワ…器―…ダチ…―…?」

「……?」
強い風が吹く。形を成さない物音は途切れ途切れに耳に入る。面と向き直った。深い闇に包まれた空洞に今にも呑み込まれそうだ。
「いや…。」
瞳孔がぐっと小さく声も消え入りそうなほど弱々しいもので、もう望みはなく絶えてしまったという落胆の気持ちが体を動かす気力を奪い尽くす。例え今立ち上がったとして、非力な腕で何ができようか。

アリスは強く瞳を閉じた。













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