「「出たあああああああぁ!!!!」」
アリスとエヴェリンは手を取り合って力なく座り込む。恐怖、そして神頼みだ。自分達の無事、もちろんそこには今化け物に睨まれてる(と思う)シュトーレンも含まれるわけで。気のせいか「シュコー…」という息遣いが聞こえてくる。伸びた枝は形態的にもはや触手だ。まるで意思を持ってるみたいに動いている。

「や…や…何あれ…エリンさん…。」
声まで震えてしまう。
「わ…わ…わかりません…。はうっ!もしかしたらアリス!」
エヴェリンはもう泣き出しそうだ。
「あのお花達が言ってたやつではないでしょうか…!」
化け物が獣のような唸りを上げる。
「レンさんこっち!逃げましょう!!」
「どどどど何処へ逃げろと言うのですか!?」
名前を呼んでも背中を向けて立ったまま微動だにしない。何処へ逃げろなど聞かれても、そんなのあてがあるわけないだろうに。
「し、知らないわよ!じゃあ他にどうしろっていうの!?」
「わからないですぅぅぅ!!!」
酷い剣幕で迫るアリスにエヴェリンの精神は限界を突破しそうだった。にしても一向に引こうともしない。もしかしてあまりの恐怖に体が動いてくれないのか、二人はそう思った。
「…すげぇ…。」
何か呟く。でも聞こえなかった。
「レンさん…?」
アリスがそっと訊ねる。

「すげぇな!かっこいい!超イカしてる!!」
振り向いたその表情はとても、輝いていた。
「何言ってるの!?戻ってきて!!」
アリスの必死な叫びも無視してシュトーレンが化け物の方へ近づいていく。
「見ろよこのデカさ!花が動いてるぞ!」
己から自殺行為に向かおうとしているのをなんとしてでも呼び戻そうとただ二人はそれだけだった(エヴェリンは口を開いたまま硬直している)。
「襲われたらどうするの!!?」
「なんでこいつが襲うって決めつけンだよ。なあ?なんて名前だ?」
あろうことか意思の疎通を試みた。言われてみれば…という気にはとてもなれない。それでも全く怯えを見せず肝の座った態度に多少ながら期待はした。
「なあおい、動くなら話せるだろ?あ、そっか…耳も口もねーな。じゃあそれが手か?」
やけに親しみを込めて話しかけいたその時だった。枝でもある太く長い蔓のような触手をすばやく彼の体に巻き付けた。腰から腹にかけてを軸に二重にがっしりとそれはまとわりつく。






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