エカテリーナはこれほどにない自信に満ちた笑みを満面に浮かべた。
「そうなのだ。お前たち…赤のポーンとして余の軍に入ってみぬか?

突然の誘いにアリスやエヴェリンは戸惑うも乗り気ではないのは二人ともそうだった。それにこれがチェスを模したものなら人員が増えるとゲームバランスもなにもかも崩しかねない。いかにも「やりたい」というオーラを放っているシュトーレンはその事を踏まえて説得しようと考えた。

「すいません…白の女王ともお話をさせていただきたいですわ。」
別の意見も交え納得してもらおうとした。
「…まあよい。あいつもお前に会いたがっておるのだ!ゲームが終わるまでにさっさと行くのだ!」
案外すんなりと話をわかってくれた。ここの女王は寛大なようだ。

早速、どこかで大砲の音が轟き空気さえも揺るがした。咄嗟にエヴェリンは耳を塞いでしゃがみこんだ。アリスもシュトーレンも耳を庇おうとしたところで動きが止まる。
「一手が終わったのだ。早くナイトに会わねば…。」
余韻がしばらく続いたが消え入るようにやがて無くなり、また元の静けさを取り戻した。
「さて、余も出陣なのだー!」
張り切って拳を高らかに掲げる。そうと決まればエカテリーナは先程ぱっくりと開いた今や壁と同化している箇所に手を触れた。
「あの…女王様!!順番とかは…駒が両方動いたときに一手…!」
慌ててアリスが彼女がどっかに行ってしまおうとするのを止めた。
「そんなもん関係ないのだ!これはチェスそのものではないのだ!…あ、あとだ。」
既に軋む音と葉と葉が擦れる音とともに扉の如く開きかけていた。

「この迷路はいくつか分かれ道がある。曲がりたいと決めた方向とは反対の方向を進むのだ。そうすれば「出口へ行ける」ぞ!はーはっはっは!健闘を祈るのだ!!」
そう言い残しエカテリーナは迷路の中枢にへと姿を消した。

「…なによ、余計な心配したわ。」
アリスは肩を落とす。なんだかんだでこの迷路の攻略法を授かったので今はとりあえずそれを頼りに抜ける事にした。
「なあ、アリス…。」
シュトーレンがアリスの背中をつつく。
「ゲーム…なんで…。」
「私達は駒なんかじゃないの!ほら…行くわよ!」
気の強い少女の後、男二人は黙ってついていった。





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