一方でエカテリーナは気にもとめてない。話を勝手に続けた。
「そして北は白の女王が治めているのだ。勿論、1つの国を二人で管理するにはお互い仲良しでなくてはならぬ。…喧嘩する程仲が良いではダメなのだ。」
アリスはすぐに察した。国の長の喧嘩で必ず巻き添えになるのは国に住まう人なのだから(他の二人はさっぱりだった)。

「でもそれではつまらぬから余は…勝負をしているのだ!」
先程の話の流れから急な展開を迎えた。
「し、勝負?」
「そうなのだ!」
エヴェリンが口を開く。彼女は待ってましたと言わんばかりに、にっと笑う。

「お前たちはチェスを知ってるか?」
「なんだそれ!」
シュトーレンはもはやお約束だ。
「そのようなゲームがあるのは…僕も存じておりますが…。」
気まずそうに目を逸らすエヴェリンはどうやら存在自体は知っているようだ。
「人がやってるのを傍らで見たことがあるだけで詳しいルールなどはさっぱりでございます。」
丁重に返すも結局は知らないのと同じだ。

「ふん、つまらん。…まあわからなくてもよい。心優しき女王リナ様が一から説明してやるのだ。」
するとエカテリーナが背中に手を回し次に表に出した時にはスケッチブックと赤いクレヨンが握られていた。まるで手品だ。シュトーレンが人一倍興味を示したが皆が無視をした。
「よいか?休戦地であるここを抜ける。森など地面が草や土など自然のものである陣地は赤、アスファルトや作られた陣地が白…まあどこかにその色の旗があるからわかるのだ。」
片手でおさえ、白いキャンバスにガリガリと、赤と白の市松模様が描かれる。
「そこでまあ…適当にこう並ぶだろ?お互い鏡みたいにこう…並ぶのだ。」
端の方にチェスの駒を表したものをちまちま描いていく(ただし赤で塗りつぶした正方形の上に描かれたものは潰れてしまってわからない)。アリスとエヴェリンは大体把握しつつもシュトーレンはただ難しい顔を見せるだけだった。
「あとはチェスと同じなのだ。でも周りに誰もいないといつどこに移動したかわからない、その場合は各マスに必ず配置してある大砲をぶちかまして皆に必ず知らせるのだ。」
ふと気になったことを、おそるおそるアリスは尋ねた。
「味方の移動範囲内に敵の駒がいた場合は「どうする」の?」
「ゲーム会場外へ強制退場なのだ。まあ見てればわかる。退場させた駒はその敵のいた駒へ移動して大砲をぶちかます。あとはチェックメイトのみなのだ!」
キングの駒の絵を丸で囲んだ。アリスは説明の最後を聞いてようやく心の底からほっとする。ほっとできないのはエヴェリンだった。
「た、大砲…ですか。」
あちらこちらで爆音が鳴り続けたら間違いなく騒音被害をどこかで受けそうだ、とアリスも半ば同情する。
「まー慣れる慣れる!」
と励ますシュトーレンが一番耳に直接入るだろうと思うとエヴェリンもアリスも同情した。
「習うより慣れろ…まさしくその通りなのだ!面白いぞ…この国がゲームの舞台なのだ!!これはお前たちにくれてやるのだ。」
アリスにスケッチブックを渡したエカテリーナはまたもや屈託なく笑う。本当にこのゲームを楽しんでいるのかもしれない。だがやはり驚くのは規模の大きさであり、以前に経験した「迷路を伴ったゲーム」とはまるで比べ物にならなかった。








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