それと同時にシュトーレンも目を再び輝かせ早速親しみをこめて愛称で呼んでみた。
「テリー様!!」
度肝を抜かれたアリスがあんぐりと口を開ける。さすがにテリー様も気難しい顔で首を捻った。
「うむ…その発想は新しい。だが些かそれだけはいただけぬのう…。」
どうやら好みの食い違いの問題だった。本気で気に入ってたのか否定されたシュトーレンは耳と頭を下げた。

「あの…女王様とは露知らずとんだご無礼を…。」
アリスが皆より一歩前に出た。
「ここは何処ですか?信じてもらえないかもしれませんが、私達は全くの異世界からここに飛ばされてやってきたのです。」
あくまで丁寧に、なるべくすんなりわかってもらえるようにと心掛けて事情を話した。淘汰の国、即ち中間点も何もかも飛ばして違う世界からまんま飛ばされてきたのがアリスとシュトーレン(彼についてはどう説明していいかアリスもわからなかった)、この際巻き添えとしてエヴェリンも同じ扱いとされた。

「なあに、ははは…そんなことは余はお見通しなのだ!」
まさかの答えが返ってきた。エカテリーナは続ける。
「実はお前達をここに呼ぶよう仕掛けたのはリナ様なのだー!ちょうど「隣国を支配から解放した少女」の話をしておって興味が沸いたから呼んだのだ!」
誰も話がすぐに掴めず混乱した。
「りんこく…かいほう…お前、そんな凄い奴だったのか?」
シュトーレンが耳打ちしてくる。
「えーと、間違っちゃいないけど…。そんな話になってるの!?」
アリスが耳打ちしてくる。
「は!?はい…アリスはもはや英雄扱いですぅ…。」
エヴェリンが流れで耳打ちしようとしたが隣に誰もいなかった。アリスは紅潮した頬を隠すように手でおさえた。
「やっ、やだ…すごい話になってるじゃない…!」
「そーなのだ!隣国の解放は外国との交流も解放…余にもメリットがありまくりなだ!」
淘汰の国がまだあの女王の支配下にあった時はほぼ独立の鎖国状態だったらしい。
「ところでここは何処だっての。」
話についていけなくなったシュトーレンが不機嫌そうに訊ねる。
「あ?ああ…ここは相対の国だ。外国の者は「鏡の国」とも呼ぶがな。そして今いる場所は余の…実家なのだ!わははは!豪華だろー!」
相変わらず見た目にあわぬ豪快な笑いをかます。これぞ女王の風格なのかもしれない。
「この国はばかでかい。余はそんな相対の国の南の領域を統括しておるのだ。普段は持ち場…城に住んでおるがたまにここに戻るのだ。」
ふと物思いに耽る顔を見せる。
「そう…大変なのね。」
見たところ確実にアリスより若いだろう。小柄な体に見栄を張った赤いケープやワンピース、茶髪を二つに束ねてくくりあげた頭に乗っかる小さな王冠がまた可愛らしく、丸い翠玉のような瞳はいつも真っ直ぐにどこかを見ている。そんな小さな存在に背負うにはとても大きすぎるものではなかろうか。アリスはごく普通の少女の視点でそう感じた。
「何が大変か!むしろ余は楽しくて仕方ないし!!」
突然エカテリーナは清々しそうな笑顔で手を広げる。
「国が自分の思い通りに動かせる…最高とは思わないか!?」
「…えーっ…そ、そうですね。」
アリスはひきつった笑みで答えた。







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