「でも、同じような景色ばっかりでやんなっちゃう!あーいつになったら出られるのかしら!」
投げやりな少女の声は静かな空間ではさぞ遠くまで行き届いただろう。結局は警戒心もへったくれもないのだ。確かに三人は身の丈程ある緑色の壁しか見ていない。下も芝生でなんとも目にも足にも優しすぎる。

「出口は必ずあるんだろ?」
「もちろん!ただそこに行くまでよ…。何も無さすぎるわ…。」

入る前から期待はしてなかったものの、やはり入ってみたら思ったよりなにもなくて一旦足を止めアリスは憮然と立ち尽くした。シュトーレンは単に飽き、エヴェリンは酷く落胆している。追っ手がどうのとかいまやどうでもよかった。

「…退屈は…嫌いだわ…。」
そうぼやいた時だった。
「はーーーはっはっはっは!!!!」


「アリス、とうとう頭おかしくなったか?急に笑うなよ。」
「私じゃないわ!」
アリスがすっかり機嫌を損ねて頬を膨らます。
「ひかえおろー!ひかえおろー!!ふははははー…げほっ、げっほ!」
何処からか少女の甲高い笑い声が聞こえ、勝手にむせていた。疑ったシュトーレンも耳をよく澄ましたらアリスの声ではない。もっと幼い。現にアリスも謎の声動揺している。
「え…?じゃ、じゃあ誰なの!?」
「誰か他にいるってのかよ!」
「ポルターガイストですいやああああぁ!!!」
辺りをきょろきょろと見渡すアリスと1つの方向に絞ってにらめっこするシュトーレン、エヴェリンは一人アリスにしがみつき絶叫している。各々がそれぞれ不確かな何かに怯えていた。
「どこにいるの?出てきてよ…!!」
アリスが懇願するように叫んだ。それに応じたみたいにかすかに地響きが唸り出す。いや、壁も震えている、そんな気がした。
「何…?」
「なにか来るぞ…。」
アリスとシュトーレンが背中を合わせ神経を尖らせる。その時だ。壁が突然ドアのように開いたのだ!
「じゃんじゃじゃーーーーん!!!」
「「「わああああああ!!!!!」」」
三人は手を合わせて腹から最大限の悲鳴を出した(例えるならお化け屋敷に入り込み見えない恐怖が姿を現したときのようといったらお分かりになっていただけるだろうか)。
「わははは!愉快なのだー!」
だが現れたのは決して人に恐怖を与える存在ではなく、小柄な少女だった。
「余の考えた迷路で迷い…油断しきったとこを驚かせる…最高なのだ。でも安心するのだ…。余もこの迷路には飽き飽きなのだ!!」
ドアを全身の力をこめて閉めながら独り言を呟き、ただの壁となったら少女は仁王立ちと
この上ない自信げな笑顔で言い放った。
「え…あの…。」
何もかもが唐突すぎてアリスもいつもの調子が出てこない。
「てめぇ誰だ!!?」
いつもの調子でシュトーレンが相手に指を差した。これにはアリスは助かったとは言いたくても言えずに思わず「あっちゃー…」と小さくぼやき頭をおさえた。
「…随分口幅ったい奴よ。よかろう!気に入ったぞ!!余はこの国の赤の女王、エカテリーナなのだ!リナ様と呼ぶがいい!」
リナ様ことエカテリーナと名乗った少女は腕を組み誇らしげに微笑む。






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