アリスはエヴェリンの手を両手で包み力強く握った。
「大丈夫よ!出さなきゃいいんだから、早くこんなもの返して厄介払いしましょ!」
彼女の気迫にたじろいで1歩後ずさる。まさかアリスから「厄介払い」という言葉を聞くとは思わずそれにも若干驚いた。
「え、えぇ…はい、まあ…そうですね…。」
まだ返事に自信は伺えないが、アリスもそれでよしと納得し手を離す。

「そうと決まれば早速ここを出なきゃ…。」
先手を切って進もうとしたがすぐに足を止めた。
「まあ!なんてこと!」
「どうかされましたか…?」
エヴェリンの問いにアリスが振り向く。
「あの人達に出口を聞けばよかったわ!!」
同じく、今言われて漸く気付いたエヴェリンが「そうだった!!」とまたまた頭を抱える。一方シュトーレンは何故か小首を傾げ
「アリスならいつか聞くんじゃないかなーて思ってたンだけどな。」
アリスはきょとんとした。
「…え、思ってた…って。なら言ってよおぉ。」
そしてがくんと肩を落とす。そう思いながらも口にしなかったのは知らずに空気を読んでいたからであり、あまり嬉しくなかった。
「…ごめんて。」
感情のこもってない形だけで謝る…と、思いきやしゅんと垂れ下がった耳の方が素直だったようだ。アリスもこれ以上誰かを責めても仕方ないとやるせなさを溜め息として外に吐き出し、まだ奥に続く道を見つめた。
「とりあえず行きましょう…なんだか開き直りそう。私が先に歩くわ。」
そう判断したのは、ここにいる二人があまり頼りがいがないと今の一連のやり取りでわかったからだ。話ができないエヴェリンと話にならないシュトーレンはタイプが両極端すぎて結果話になりやしない。それでも警戒心は決して解いてはならない。何かがあったら三人でなんとかするしかないのだ。

「でもアリスは考えたことあるのか?」
自分に負があると思い込んでいるエヴェリンは俯きながら、シュトーレンはアリスの後ろを素直についていく。そして質問した。
「何を?」
どうせまたしょうもない事だろうとさほど気に止めなかった。
「もしこの迷路からずっと出られないとか、出口なんかほんとはないんじゃないかとかさ。」
歩む速さを緩め素っ気なく返した。
「考えたことなかったわ。入り口があって出口がない迷路なんか迷路じゃないもの。」
はっきりと言い切られたがシュトーレンはまだどこか腑に落ちない様子だった。
「迷路はやっぱり迷うものね…。でも、私たちの気持ちまで迷子になったらそれこそ永遠に出られないでしょう?それならひとつの考えに絞った方がいいと思わない?しかも前向きに。」
シュトーレンもエヴェリンもぐうの音が出なかった。しばらくしてアリスが自らを嘲り笑った。
「…うふふ、あらやだごめんなさい。私ったらまた変なこと言っちゃったみたい。」
少なくともシュトーレンにはさっぱりだった。
「前向きに…ですか…。」
ただ一人はその隣で小さい声を漏らしたのだが誰の耳にも入らない。







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