奇跡的に自分達と全く同じ境遇でここに迷いこんでしまい願わくば皆で協力し、苦労をわけあい手を取り合って共に迷路から抜けられるように、と。


「…エリン?」

シュトーレンがアリスにとっても聞き覚えのある名前を口にした。
「あ…あ、あな…あなたは…なんで、こんなところに…!」
「それはこっちの台詞だぞ!!」
警戒心をすっかり解いて嬉々として怯える相手の肩を掴む。
「ひいっ!!」
逆にこっちがなにやら悪いことをしたのかというぐらい強張った顔と感情による涙で潤んだ目をしていた。しばらくして見兼ねたアリスもシュトーレンの隣に並んだ。すると(アリスにそんなつもりはもっぱらないのだが)、とうとう手が震える程にまでに至ってしまった。
「お久しぶりね。まさかこんなところで会えるなんて…エヴィリンさん。」
なるべく相手の緊張を解すよう、取り繕った笑顔で会釈をする。
「違うぞ!アリス…こいつはエリンだぞ!」
肩から手を離し、腕をくんでシュトーレンが言い張る。気の弱そうな少年はそんな二人のやり取りを見ていつもの本調子を取り戻したようだ。
「…どっちも違います… エヴェリン…で、よく間違われますが決してエリンなどではなくてですね…。」
白と黒の目が泳いでいる。
「だってエリンの方が可愛いぞ。」
「人の名前に可愛さを求めないでください!ただでさえこの名前…知ってますか…バラの名前なんですよ…。」
しゃべっていくにつれ段々声のトーンが下がっていく。シュトーレンはもちろん知らないわけで別に興味もなかった。
「…ところで、エリンさん。あなたはここで一体何をしているの?」
アリスが本題に切り出した。大きなリュックは相変わらずで、服装はラフである。
「エリ…ッ、ああはい、アリス…。あいつがこれを落としていきまして。」
そういって服のポケットから取り出したのは、フィッソンが身に付けていた鍵にも似たペンダントだった。反射した太陽の光が幾分眩しく感じる。
「これはフィッソンさんの…。」
「ええ。実はアリスが元の世界に戻ってすぐに気付きまして、あいつも故郷に帰ったていうからわざわざ届けに言ったんですが…しばらく会えないと…とほほ…。」
今度はハンカチを取り出し涙を拭う(仕種をした)。
「ですがもう限界です!これのせいで僕はもう散々な目に遭ってきたんです!現在進行形で!」
濡れてないハンカチを振り訴える。確かに、ただのアクセサリーではない事は「あの時」にしかと見せつけられた。








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