二人はまずどちらが先頭になるかを話し合った。やはり途中で話がずれて収拾がつかず、アリスの提案で最終的にジャンケンで決めることになり、勝った方が先頭だと言い出したアリスがパーで負けた。腑に落ちないが渋々シュトーレンの後をついていく。二人して偉い人に謝るぐらい腰を折って静かに葉の壁が織り成す迷路の中へと入っていった。

「…見つかったらどうする?」
シュトーレンが早速出くわした分かれ道を左右確認している。アリスはできればそうならないことを祈りながら答えた。
「その時はその時よ。」
彼は右へ曲がる。アリスも右へ曲がる。

「………………。」
ただただ、黙々と、迷路を進む。当然、五感を澄ませた二人は真剣そのもの。動物的な勘が働いているのか割りとシュトーレンは迷いなく道を選んでいく。
「………。」
そんな中でアリスはまたもや懐かしい気分に駈られた。あまりいい思い出ではないが、彼が三月兎と名乗る者ならば尚更重ね合わせてしまう。

目の前の背中は随分大きく、しっかりしていた。

…とはいえ、今目の前にあるものはほぼ真ん丸い毛の塊であり、随分小さく…毛並みは良さそうで…。
「…駄目よ!だめだめ!…あとからいくらでも触れるから…。」
と、心の中で言い聞かせながら衝動をおさえた。

「しっ、アリス。」
シュトーレンが曲がり角に差し掛かる手前で立ち止まる。
「どうしたの?」
「…そばに人がいる。」
アリスでは到底聞き取れない僅な息づかいを聞き取ったのだ。シュトーレンを先頭にして正解だと染々思った。
「じゃあ引き返して別の道を行きましょう?」
できるだけ人の気配から遠ざかりたいアリスは提案した。お互いにとっても大変都合のいい提案なはずだと。
「…誰だろう。」
しかしシュトーレンは提案を呑み込むより壁から顔をのぞかせ堂々と向こう側の様子をうかがうといった自殺行為に及んだのだ。
「ばか!誰に見つかったところで終わりなのよ!?」
小声で止めるもそういう時に限って耳に届いてくれない。半ば諦めの気持ちが沸いてきたアリスを無視して首から上を覗かせた。
「………!!」
長く立った耳はさぞ目立つ。そういえばここの迷路から聞こえたのは屋敷の中で聞いたものとは違い少年の悲鳴にも似た声だった。運が良ければ、それは自分達と同じく迷路に迷った人かもしれない。でも、その人物がそこにはいないかもしれない。消去法で可能性が少なくなっていく。アリスは賭けた。









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