ここは見る限りこの屋敷の庭といった所だろう。後ろを振り向く。白亜の壁に煉瓦が埋め込まれてある箇所もあり、先程アリス達がすり抜けた等身大の窓がいくつも並んでいる。重厚そうなカーテンが閉められた所はまだ他にも部屋が存在するということだ。それも沢山。案の定、建物が大きい。廊下を走るなと叱る声をよく耳にしたアリスだが、むしろ走ってみろと煽るぐらい長い廊下に違いないと思った。

そして庭の方へ視線を戻。

青々と繁った葉っぱの壁がひとつの道を作っていた。
「…まあ、なんてこと!これこそまさにデジャヴだわ!!」
憮然とたる表情で声をあげる。
「デジャヴって、なんだ?」
シュトーレンがアリスの後ろ一歩の距離を置いて彼女の頭上から先を見通しながら聞いた。
「こんなこと前にもあった!…みたいなものよ。例えば「私前にも居残り掃除させられたような…てこと、貴方にもあるでしょ?」
シュトーレンはしばらく思考を手繰り寄せて言った。
「ないな!」
そらそうだ。まず居残りの概念すら彼には無いのだから。それと、デジャヴの本来の意味をアリスは履き違えていた。
「アリスはあるのか?」
「私はないわ。クラスで意地悪ばかりする男の子がよくさせられいたの。」
普段からそれなりに優等生だったアリスの話ではなかったようだ。話し方も他人事のようでそれほど興味もないみたいだが。
「でも優しい時もあるのよ。私が嫌いなにんじん食べられなくて困ってた時…。」
「ところで居残りって、なんだ?」
二人の会話が見事に逸れ始めた時だった。

「ひえええええぇ!!」
「「!!?」」
葉の壁の奥から声がした。アリスとシュトーレンは驚き固まる。
「今、声が…。」
「したよな…。」
更に、草と草を掻き分けるガサガサといった音まで耳に聞こえた。
「どうしましょう…?」
途端に声をひそめた。感づいたシュトーレンも小声になる。
「でも、ここを抜けるしかねェと思う。…姿勢を低くしてこっそり進もうぜ。」
これほどまでの妙案はなければ二人に「進む」以外の選択肢なども更々ない。アリスは無言で頷いた。







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