ついでに言うならこの街を訪れたのも偶然だった。あのあと獲物を見失った魔物は右往左往し、そこに追い付いたスタンザ達が始末した。追う者もいなくなったところで、これからの行動方針を話し合おうとしていたところ、地上から歪な気配を感じたスタンザが先に降り立つと人の街に魔物が侵入しようとしていたのだ。

思ったより数が多く、群れの中でリーダーにあたる一際強い魔物に手こずっている隙に逃げ出した数体をサタンザが屠ったところだ。敵が逃げたことに気づかなかったこと、駆け付けるのが遅かったことが街の中央まで魔物の侵入を許すはめになったが、かろうじて間に合った。ツバキが街に着いた時ににスタンザは魔物との戦闘を、そして彼女が教会に逃げ込むまでの間に魔物が侵入したのをサタンザが倒して今に至る。

でも、彼女は二人からも追われていたのを知らなければ彼等も彼女を追いかけていただなんて知るよしもない。知っていたとしても、きっとわざわざ言ったりなんかしないだろう。
「化物も片付けたし、せっかくだからここがどういった所か聞いといたほうがいいんじゃないか?」
用の済んだサタンザが話し掛けてくる。
「いや…聞ける状態じゃないと思う。一旦安全な場所に避難させて他の人に聞こう。」
警戒心をほどいて集まってきた子供の頭をなんとなく撫でていたスタンザは笑みを崩さないまま返したものの、更に正論で返される。
「土地勘の無い俺達にどこが安全な場所だってわかるんだよ。」
「それは…。」
スタンザが言葉に詰まり、見兼ねたツバキが自ら口を開いた。
「相対の国の中枢、鏡の城または「双璧の鏡城」は一番安全が確保されている。ただ…そこへ行くまでまた遭遇するかもしれない。」
いまや人と同じ数ほどの魔物がうろついている、人の街まで入り込んできたものだからもはや安全地帯はない。
「俺とスタンザが護衛すればいいんだよ。な?」
サタンザと同じ事を考え付いたスタンザは二つ返事で提案を飲み込んだ。道を知っているならそれについていき、襲ってきた魔物は自分達が倒せばいいのだから。
「そうだね。一刻も早く避難して…。」
振り返ったスタンザは血相を変え左手から召喚したリボルバーの銃口をサタンザの頭上に向け発砲した。銃声が鳴り響き空間に余韻を残す。
「な、なんだよ急に…。」
しかし、サタンザも気付いた。建物の隙間から魔物が次から次へと沸いてくる。今度ばかりは形態も大きさも多種多様で、一体どうやって隠れていたのだと言いたくなるぐらい巨大なものまでいた。
「なんだこの夥しい量は…こんなにいたらもっと早く気付いてもおかしくないだろ!?」
剣を構え直すサタンザはどうも腑に落ちなかった。スタンザも違和感を覚える。
「いたんじゃない……今現れたんだ!」
そう、二人は魔物を倒して呑気に話していたのもそれっきり気配を全く感じなかったから、もういないものと思っていたから。これほどの禍々しい気配はたった今発生したのだ。
「……この魔物を倒してから現れた。もしかすると倒れる際撒き散らした花粉と思われるものがおびきよせたか…。」
魔物の一体がサタンザめがけて勢いよく起き上がる飛んでくる。実物より三倍の大きさはある蜂の姿をしていたが鋭い針は額に生えていた。
「御託はいいんだ…よッ!!」
サタンザの一振りであっさりと斬られ、黒い飛沫を派手に散らしながら二つになった身体は地面に落ちた。
「お前はそいつらを…。」
しかしスタンザはリボルバーではなくサタンザと同じ剣を左手に握り彼の元へ歩み寄った。
「この数じゃ君一人でも分が悪い。応戦するよ。」
一人だけに全てを任せ黙って傍観するわけにもいかない。勿論、力を限りあるまで出せるよう教会の扉を閉めてきたが、まあ隙を狙って魔物が教会に入り込むかわからない。背中を預けた状態でサタンザの死角の敵を倒す、スタンザの意思を察したサタンザも静かに剣を構え直した。
「どんどんかかってきやがれ!!」
「後ろには行かせない!!」

小さな街の大規模な襲撃聞き付けた国の兵士が街に来るまで、二人の奮闘は続いたのだった。






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