皆が皆、身の毛もよだち顔から血の気が引いた。そうこうしている間にも岩は至近距離にまで近付いてくる!

揃って一目散に逃げ出した。

「うわあああああああ!!!」
腕をへし折られる怪我を折っていても逃走本能はずば抜けて高いエヴェリンと、見た目によらず異様に足が速いアレグロの後に必死にアリスはついていった。彼女も速い方だとはいえ身体能力は少女の平均並だから追い付くのが精一杯である。

そして体力云々もみっちり鍛えられている兵士のヘリオドールを差し置いてカルセドニーは杖を箒代わりに跨がって飛んでいる。
「セドニー…はっ、お前…魔法であの岩どうにかできないのかよ…ッ!」
穏やかじゃないのは呼吸だけではないようだ。
「飛んでるから無理☆」
とふざけたように舌を出しながら茶目っ気を醸し出してみるも実際は本当に無理なのである。まず炎でどうにかしようと試みても失敗したら火だるまとなり倍の危険度を増す。砕いたら破片が転がり、吹き飛ばそうにも対象の勢いと重さによる。いずれにせよ詠唱に集中できないため成功率にも期待できない。

<第一問ですわ〜。>
蝙蝠の姿はなかった。楽しそうな声だけが聞こえる。

<バラとユリが競いあいました。果たして負けたのはどっち?>
「はぁあ!?…パス!私こーゆーの苦手!」
カルセドニーはどうやらなぞなぞは「範囲外」らしい。考える時間も惜しいがパスといったルールはない。
<誰が答えてもよろしいですわ。ほらほら早くしないとぺっちゃんこになってしまいましてよ、をーほっほっほ!>
急かし、煽られ思考がとっちらかる。壁はもう目の前だ。
「バラ!バラだわ!負けはloseでバラもroseだもん!」
そこでアリスが声を張り上げて答えると、壁は真上に上がり道へ続いた。
「さすがですアリス!」
仲間の称賛にいちいち返す余裕はない。今ので更に息が苦しくなる。

<第二問ですわ〜。ほくろがついている動物はなーんだ。>
今度は二択ではない、つまりあてずっぽうが効かない。
「豹よ、豹しかいないじゃない!」
しかし、アリス。それはほくろではない。
「シマウマだよシマウマ!」
それも違う。ヘリオドール、シマウマのシマのことを言ってるのではない。
「あぁもうわからないよおおお!」
「あっ…僕わかったかもしれません。自信ないけど…。」
泣き言とを喚く兵士の後で一人呟くエヴェリンに「関係あるか!!」や「早く言ってよ!!などといった怒号が沸いた。
「ひっ…ほくろもモグラもmoleなので、モグラではないでしょうか!?」
二回目も壁が開かれる。正解だった。
<をーほっほっほ。ではお次はクイズでいきますわよ。第三問、常温で唯一液体の金属…。>
この程度ならエヴェリンはお手のものだ。
「水銀です!」
だが扉は開かない。
<…水銀の沸点と融点は何度でしょう!>
予想外すぎた。名前は一般的に知っていたとしても誰がそんなところまで常時覚えてるというのだ。
「えええぇ、そんなあ、お…おしまいだあああ!!」
お手のものどころかお手上げである。他の面々に至っては世界が違うレベルの問題だ。

「融点はマイナス38.9、沸点は356.7!」
まさかのヘリオドールがあっさりと答えてくれたおかげでギリギリだがゲームオーバーを免れた。
「なんでそんなことしってんの?キモい…。」
カルセドニーは若干引いていたがヘリオドールはもう慣れだした。
<まだまだいきますわよ〜。>
岩との距離はかろうじてやや離れたものの、皆の体力は徐々に限界に達してきている。終始全力疾走なのだもの。特に、一人の少女には大変堪えていた。
「私…もう…足が、きゃあ!?」
ここで運悪くアリスはつまづいて前へ転んでしまった。すぐに起き上がらなくてはいけないのに、足に力が入らない。
一瞬頭が真っ白になり、周りの物音が聞こえなくなった彼女の手を仲間は無言で掴んで力任せに起こす。
「わっ、わわっ…エヴェリンさんちょっと…。」
バランスを崩しかけるもなんとか踏ん張った。後戻りすることに躊躇いはあった。気づいたら体が勝手に動いていた。そのまま腕を引いて走ったのも無意識のうちの行動なのかもしれない。いつからこんなことをするようになったのか、全てが終わった後彼はまた悩むのだろう。

<第四問ですわ〜。不死鳥は実は死んだことがあるのになんで不死鳥って呼ばれているんでっしょ〜か!>
「…え?死んだことがある…?」
さっきは何も言わなかったのにエヴェリンは思ったことをつい口から漏らした。

「簡単だべ、死にそうな時自分の身ぃ焼いて灰から赤ん坊になって生まれ変わりの繰り返しなんだな。そうやって永遠の時を生きてきた。」
活躍なしかと思われたアレグロがさりげなく解答を述べる。
<答え自体は合っていましてよ。>
怪しい言い方にしては早くも壁は上がったため正解を当てたのは間違いない。







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