第二関門「genius」
扉の反対側に書かれていた。最初に気付いたのはアリス。「genius」とは英語で天才の意味だが、今度はアレグロただ一人読むことが出来なかった。一行はまた似た道を歩く。

「ジーニアス…頭を使う罠なんでしょうか。クイズなら多少得意なんですが…。」
現役学生でもあるエヴェリンはもしかすると次は自分の独壇場ではないだろうかと言いたそうだ。それをいうならアリスもだ。だが彼女は勉学について自信がある方ではない(苦手ものと得意なものの差が激しいのだ)。
「私はなぞなぞのほうが面白くて好きよ。それに得意なの。」
と、自慢気に話すアリス。誰も面白いかどうかなど聞いていない。
「じゃあ僕にひとつなぞなぞ出してみてよ。」
突然間に入るヘリオドール。彼のめぼしい活躍はいまだ見ていない。しかし急なものだから大人を悩ませるような問題はすぐにぱっと浮かばない。
「パンはパンでも食べられないパンは?」
エヴェリンは脳内でフライパンを真っ先に思い浮べたが、わざと悩むふりでもしてヘリオドールも結局答えは同じ。
「んーとフライ…。」
「腐ってカビの生えたパンに決まってるでしょ。」
カルセドニーがヘリオドールの答えを遮った。これにはアリスも意外としかいいようがない。
「言われてみたらそうだわ…でも。」
その時カルセドニーは口角を上げて余裕の笑みを浮かべた。
「(fry)フライって揚げてるじゃない。あげパンは食べれるわよぅ。」
ヘリオドールは首をかしげる。アリスとエヴェリンは顔を見合わせ「そういうことか!」と声をあげた。これはアリスもしてやられたもんだ。少しばかり無茶はあれどそれがまたなぞなぞの醍醐味でもあるのだから。

<ですわよ!!>

「きゅ…急になんですか?」
ビックリしたのはエヴェリンだけではない。
「あらやだ、今のは私じゃなくてよ。」
いくらなんでも突拍子過ぎる、そもそも少女の声だがアリスのものとは違う。聞いたこともないキンキンとした声、それはカルセドニーの目の前に現れた蝙蝠が発していた(動物が人間の言葉を喋るのに慣れている皆は驚かない)。
<をーほっほっほ!ご機嫌麗しゅう。>
先程のとはうってかわって礼儀はちゃんとなっていた。笑い声を除けば。
<私の名前はアドゥールCと申しますの。貴方達のお名前は結構ですのよ。じきに死んでしまう者の名前など覚えるだけ無駄ですもの。>
蝙蝠の名前を覚えても仕方がないのだが。
「アドゥールC、ならAやBもいるのかな?」
とヘリオドール。
「蝙蝠じゃ見分けがつかないわ。」
続けてアリス。
<AもBもいませんわ。私は私だけですことよ。>
ご親切に二人のジョークにも返してくれる。そんななかでカルセドニーはやはりこのまますんなりと通してくれるわけにはいかないのだと落胆した。
「ただで死なせてくれやしないんでしょーが。」
その通りと言いたいのか蝙蝠が円を描いて飛び回る。
<せいかーい!あの向こうの方、行き止まりになっているでしょう?>
確かに、壁で塞がっているのがわかる。
「そうねぇ。…で?まさかそれだけではないでしょう?」
扉の文字を思い出しながらカルセドニーが問い詰めた。

<当たり前ですわ〜。私が出題するなぞなぞやクイズに見事正解したら次の道へ進むことが出来ましてよ。>

ここは元からそういった場所だったのだ。「天才」と名付けられたからには一筋縄ではいかないとしても、第一関門のような危ない仕掛けも無さそうだ。
<た・だ・し。誰かさんみたいにそう甘くはいきませんことよ。>

どこか不吉にも聞こえる言葉。お約束のように、良くない事が起こる前兆として地震が空間を縦に揺さぶった。
「な、何よぅ…もう。」
「地震?つ、机の下…大変だセドニー、隠れるところがないよ!」
いつか習ったノウハウは条件を満たす物がなければ役立たず。
狼狽えきょろきょろし始めるエヴェリンは見てしまった。
「大変だあああああぁぁ!!!」
遥か後ろを指差して喚き散らす。皆も一斉に振り向いたら吃驚仰天。

なんと、道いっぱいの大きさの真ん丸い岩の塊がアリス達の方へ向かって転がってくるのだ。何処から現れたかわからない、下り坂じゃあない、なのに迫り来るにつれ速さも増している気がする。







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