うっかり落ちても運悪く落とされても最期。そんな所に連れてきておいてカルセドニーは余裕綽々だった。
「凝った演出だと思ったらいーの。」
それは当然、渡ることのできる道があるかだがいざ演出と言われてリアルすぎる。無様をさらけだしてしまったヘリオドール、歩いたら床が崩れてしまうのではないかというぐらいなんだか重そうなアレグロ、そして平然な顔のアリス。自分がおかしいとと思うぐらい周りは普通に渡っていくが怖いものは怖い。なるべく足元だけを見てエヴェリンも床に足をおろす。

「…ん?気のせいですかね。」
足がついた瞬間、その床に円形の青い光があらわれた。両足でついた時だった。
「うわああぁ!?」
一番後ろから聞こえる悲鳴に全員の視線がそちらに集まった。
「どうしたってのよ!!」
やたら癇癪を立ててカルセドニーが声をあげると自身の足元にも同じ光が出現する。
「…ちょ、嘘でしょ!?」
慌てて隣の床に退けると、さっきカルセドニーの立っていた床は光に包まれ消えてしまったのだ。
「消えた…どうなってるの?」
急に不安が立ち込めるアリスに追い討ちをかけた。
「大変です!!扉まで消えてます!」
エヴェリンの言う通り、扉が最初から存在しなかったみたいな、なんのへんてつのない岩壁が地面を挟んでいた。嘘かどうか確かめようにもエヴェリンと扉を繋ぐ床はない。
「セドニー…どうするのさ、僕らこのまま落ちるのを待ってろって言うの?」
一行の不安をより煽る質問を投げる。床が落ちていくなら余裕もへったくれもあったもんじゃない。
「こんなはずじゃないわ。私が来てることぐらいわかってんだから罠は解除してあるはず…。」


『ヨウコソ!灼熱ノダンスステージヘ!!』

何処からかやや低めの男の声が響いた。それぐらいでは皆驚かない。疑問、謎が増えるだけ。
「なぁぁぁにがダンスステージよ!あんた一人裸踊りでもしてなさぁい!!つーか、コレどーゆーことなの!?」
さすが案内人。謎の声の正体も掴めている上にいらぬ暴言を交えた。どうしても何者か気になったアリスも大事な話は邪魔しまいと口をおさえる。
『ヤナコッタ。アーアー…此レハ「あの方」カラノ命令ダカラ仕方ナイ、諦メナ。ケケケ…。』
いかにも人を馬鹿にした笑いをあげる。
「あんた、私が誰か忘れたなんて有り得ないわよねぇ?」
対して何か考えでもあるかと思わせるぐらい勝ち誇った笑みを浮かべるカルセドニーに逆に皆は彼女を今度こそ疑わざるをえない。こんなところで強がったところでどうなるのかと半ば思いつつ。
『ケケッ?勿論記憶シテルゼ、クソババァ。黄色ク光ッタパネルヲ踏ンデバイケバワカルゼ。点滅シタラスグ消エルカラナ。ヒントハ「女王」。精々ガンバリナ、バイバーイ。』
姿が無いためわからないが、謎の声はそれっきりしなくなった。
「だ…誰がクソババァよ…!」
カルセドニーの拳と肩と背中が怒りのため小刻みに震えている。倍の暴言を返され彼女の女性としての尊厳を悉く傷つけられた。
だが、それどころではないと早速黄色い円形の光が顕著した。
「えっ、あああんなところ!?」
二つパネルの向こうが最も近いときた。だがぼーっとしてるとすぐにまた光は点滅を始める。ヘリオドールは性格的に向いていないらしい、慌てて離れたパネルまで駆ける。
「ふぅ…どんどん足場がなくなっていくのか…。」
振り向けば確かに、自分が立っていたはずの
パネルがもう無くなっていたのだ。こうやってどんどん削られていく。
「でも離れた所なら別にそこまで行かなくても今いる所からのいたら…。」
それを聞いていたアリスが「なるほど」と相槌を打って三つ向こうのパネルが光ったのでひとつ分だけ進んだ。だがそのような怠惰は許されない。
「きゃっ!?」
青く光りだしたから点滅したパネルへ走ると二つ分なくなっていた。他の面々も飛んだり越えたりと、無意識のうちに岩漿落下という最悪のシナリオを築き上げようとしている。しかし動かなくても辿り着く結末は同じ。チェス盤を動き回る駒のようだ。

「ヒントまでくれたのよ。絶対何処かに「落ちない」パネルがあるはずだわ。」
カルセドニーは一人思考するもその猶予さえ与えさせてくれない。動いた先々の床が消える仕組みになっているのだから。
「チェス盤のような床…女王…女王はクイーンの駒を指しているのかしら?」
当然、彼女を待つ慈悲はない。斜め前のパネルが黄色く光った。カルセドニーは自分のいるパネルが青く点滅しているにも関わらず、動こうとしなかった。光は一旦引いたのはまもなく床が消失する合図なのか、焼失するのは自分だ。だがカルセドニーはある閃きに基づいてわざと動かなかったのだ。








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