ふと天蓋の奥に何か置かれているのがアリスは気になり、忍び足でそーっと歩み寄る。なんとなくこの部屋の雰囲気が彼女をそうさせたのだ。恐らく部屋の主からしたらアリスも不法侵入になるのだろう。たまったものではない。そんなことを考えつつ好奇心には勝てない。

「…あら?ぬいぐるみ?」
枕の周りには熊や動物のかわいらいぬいぐるみや女の子の着せ替え人形が寄せ集められている。他にも絵本などがある。
「うふふ…ここは子供部屋なのかしら?」
萎縮してばっかりだったのでつい微笑ましくなる。しかし子供が過ごすにしては尚更不相応な部屋な気もしてきた。
「だとしたら私、こんなに広い部屋に一人だなんてとても落ち着かないわ!あ、もしかしてこのぬいぐるみ達…。」
片付けずあえてここに集めていることに余計なことを察しかけていた。


「のわあっ!!!」
突然、男の声が後ろの方で物が地にぶつかる音と共に穏やかな雰囲気を打ち破った。アリスの背筋が凍り息が詰まるような緊張感に襲われる。
「…いた…え?どこだ?ここ…。」
間違いない。あちら側の世界で自分の命を狙った男がここまで追いかけてきたのだ。招かざる来訪者はそれっきり何も言わない。口にしないだけできっと先程のアリスと似た心境なのだろう。しかもアリスほど飲み込みが早いわけでもない。

つまり、隙がある。

なのにアリスの頭は一瞬にして真っ白になり鼓動も呼吸も段々加速していく。

「…あ、あ…。」
今ならあの大きなドアを抜けたら密室からは逃げられる。とはいえ初めて訪れた場所。このドアの先には何があるのか?
「すげェ!!お金持ちの家みたいだ!」
男が言葉を発する度に肩が跳ねる。気のせいか声が若くなった。でも気にしない。動いたら、目をあわせたら終わるような気はした。

「こんなでっけ〜部屋初めてだ!すげー…部屋じゃなくて家じゃないのか!?」
…気のせいなんかではない。明らかに言っている台詞の内容が精神年齢の低さを感じさせた。いや、ただ元いた世界との差にはしゃいでるだけ…と思ったら大変余計なお世話である。

「あ…おい!…お前、ニンゲンか?」
混乱した。言葉につまる。どうしたらいいのか、振り向くのか。何故だろう、全く違う別人がそこにいるみたいだ。でもそうじゃなかったらどうしようとか。
「さっきちょっと動いたから人形じゃねーな。」
と、今度は向こうから近寄ってくる。怖い。怖いけど、近くのドアの隣まで距離を縮められるのは阻止した方がよかった。アリスは思いきって、振り向いた。








人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -