アリス達は早速難関にぶつかった。

カルセドニーに連れてこられた場所は、林に囲まれた広い道の行き止まり、岩の壁にくり貫かれたように存在する薄気味悪い洞窟の入り口前。見るからに蝙蝠でも飛んでそうで、奥から吹いてくるひんやりとした冷たい風が頬を撫でて更におどろおどろしい雰囲気を醸し出していた。
「ここは…?」
アリスが不安げに聞くとカルセドニーも呆れたように岩でできたごつごつとした壁を溜め息をついて見上げた。
「見ての通り、入り口よぅ。悪趣味だと思わない?」
皆が頷く。想には一同が賛成だった。
「モンスターの巣窟みたいですね…。」
エヴェリンの独り言に一匹のモンスターは首を横に振り拒絶の意思を見せた。
「てゆーか、問題はあんたよ。」
手に持っている杖でヘリオドールの隣にぴったり添って座り込んでいる巨大な獣を指した。一方指された方は意味がさっぱり理解できず愛くるしい顔を傾げた。動物好きの二人はいちいちの仕草に釘付けになるが、そうでないカルセドニーにとっては厄介者でしかなかった。
「その白々しいのむっかつくわー…。ほら、そのバカでかい図体じゃ入らないでしょーが!」
誰も想定外だった事態で無理に呑み込むしかなかったのだが、カルセドニーは自分の計算ミスを棚に上げてもう一度わざとらしく大きな溜め息を吐き出した。そう、入り口は大柄な男性がぎりぎり入れるぐらいの狭さしかない。
だからといって置いていくわけにもかない。

「………お前らのようになればええんか。…どうしてもならんといけんのか…。」
渋る一方で嬉々として喜んだのはヘリオドールだ。
「あはは、なぁんだ!君、姿を変えること出来るんだ。それなら都合がいいや。個人的には今の姿をもっと拝みたかったけどなあ。」
カルセドニーも一安心して笑みを戻す。
「物分かりいいじゃないのぉ〜うふふ、嫌ならあんたを収まるぐらいの小ささに切り刻んであげてもいいけど。」
気のせいだろうか、アリスとエヴェリンは同類でありながらも人間という生き物が一番恐ろしいのではないのだろうかとつくづく感じた。
「気が進まんが仕方ないべ。…怖いって言わんでな。」
怖いと言う割りに愛着のある顔をしているのだから単に謙遜の言葉を述べてるに過ぎないとアリスも皆も信じた。
耳と尻尾もつられて一緒に深く項垂れる。魔物の群れでは中堅に位置するバンダスナッチも人の脅しにはあっさり観念したようだ。

「…おめえ、邪魔だな。」
「…ん?うわっ!」
すぐに動こうとしないヘリオドールの肩を掴んではカルセドニーが強引に後ろへ退けた。
自身から一通りの距離を置いたのを確認するとバンダスナッチは嫌々ながらも唯一会得した魔法(本人は魔法の原理を理解していない)を発動した。青白い光に包まれ其れはみるみるうちに姿形を変える。
「…久々に見るわねぇ。」
カルセドニーだけは何故か懐かしそうにその様を眺めていたが誰か気に止めることか。光の塊は段々と縮小し、人の形に近づいてゆく。ずっと刺さっていた矢も地面に落ちた。これで問題はひとつ解決されたが皆は興味津々だ。光は消え、魔法は解かれた。そして其処に現れるたのは、体格のいい男だった。

「可愛くないよおおおおぉ!!!」
ヘリオドールのひどく嘆き悲しむ声が響き渡る。それは直球すぎて、今さっきまで獣の姿だった彼の胸にダイレクトに突き刺さった。

「最初からどんなのを想像してたのよ…。」
と、カルセドニーの一言はごもっともだがエヴェリンも微かに足を震わせながらりげなくアリスの後ろに身を潜める。対してアリスは案外今の姿に納得しているようだが、尻尾と思われし物が気になって仕方無く、そればかり見つめる視線が彼の疑心暗鬼を煽る。
「………やっぱここにいる。」
見た目のごつさには似合わずとてもナイーブだった。すっかり落ち込んでしまい、後ろの樹の影に隠れようとしたのを慌ててカルセドニーが制止しに行った時。
「待って!!」
まさかアリスが男を呼び止めた。吃驚した一同が彼女の方を振り向く。







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