アリスもアリスで上手く言い訳すれば巻き返せたはずたが、その場の具合がまずくなっていくのを取り繕うことができなければきまりが悪くなる一方。今は味方の兵士を敵に回したくない。
「あ………ごめんなさい!!!」
先に謝っておくことで詰問を避けようと測ったが、通じない相手には口を割っただけにしか過ぎない。
「言うの忘れてたわぁ。いかにも怪しかったから脅したら白状してくれたの、金髪の女と兎の獣人が「鍵をもって扉を開けた」ってね…。」
カルセドニーはなんと最初から目星がついていた上でアリスを嵌めたのだ。兎の獣人はここにはいないし一緒にいたドルチェがカウントされていないのら彼は元から森に居たからだろう。
「あらやだ、なにもあんただなんて一言も言ってないわよぉ?」
それは逆にアリスだと決定付けていると言っているようなものだった。そう聞こえたアリスはもう隠そうとするのやめた。

「金髪の女…私です。扉を開けたのも私なの…。」
覚悟を決めて白状した。どんな罰をいつ与えられようがそれが己のした業なら仕方無いと思っても、やはり一人の少女には重すぎた。
「まっ…待ってよセドニー!だったらなんでフィッソン様は鍵を持ってたんだい?」
ヘリオドールの質問にアリスはありのままを答える。
「中にいたスネイキーて人に一度見せたけど、あとでちゃんと返してもらったわ。」
そこにカルセドニーは推測で答えた。
「これはあくまで私の考えたことだけど「予め鍵のダミーを用意し、気付かぬ間に本物とすり替えた」。いいこと?ひとつの封印で魔物全員の封印を解いてしまった…あの鍵が手に渡ったもんなら更に魔物の力を解き放してしまうわ。」
信じたくなかった。現在の危機的状況を作り出したのはまごうことなくアリス張本人だったということになるからだ。興味本意で、なぞなぞを解く感覚でやってはいけないことをやってしまったのだ。

そしてアリスはもっと大事なことに気づいた。

「………ねえ?もしかして…ジャバウォックも…?」
カルセドニーが歩く速度を徐々に落とし、少しの無言を続ける。その間がとても重い。最終的に立ち止まり、くるりとこっちに身を向けた。
「国を救った英雄が世界を滅ぼすって中々ネタにしてもきょうび思い付かないわよぅ?アリスちゃん。」
何故だろう、そう言うカルセドニーは不適な笑みを浮かべて仁王立ちしていた。かえってアリスに威圧感、ヘリオドールに不信感を抱かせる。だが彼女は関係なく続けた。
「なになに、叱られるとでも思ったかしら。でも、怒ってどうにかなるよーなことじゃないでしょ?私は「賢い大人」なのよ?おかげであんたが鍵も選ぶレアなすごい奴ってこともわかったし…。」
聞いている方は彼女が何を言いたいかさっぱり意図が伝わってこなかった。アリスもさすがに調子が狂う。世界が滅ぶ、それをまあ他人事のように抜かすものだから。

「ならセドニー!僕らこんな呑気にしている場合じゃないよ!」
ヘリオドールがカルセドニーの発言を咎める。
「いつも呑気なあんたがな〜にバカほざいてんのよっ!」
「そっちがバカじゃないか!他人に聞かれちゃまずい話ならなにもここまで遠く離れた所に行かなくてもいいだろ!?」
アリスを挟んで賢い大人とは思いづらい口喧嘩をおっ始めた。止めようにも止めて良いのかとアリスは躊躇う。

「私がなんの用もなしにこんなとこまで連れてくわけないじゃない!このモヤシ!!」
怒ってどうにかならないなどとさっきいったばかりのカルセドニーがやけくそに暴言まで吐いた。モヤシと言われたらそれっぽく見えるとアリスは感じ、本人も否定できないのか「モヤシ…。」と弱々しく呟いたきり反論をしなくなった。

「ふん…結界を解く際に魔物が侵入したらそれこそ大惨事でしょうが。いってもあれはただの卵なんだから。」
溜め息混じりに言いながら片耳のピアスを外す。紫色をした丸い真珠のような形をしている。
「た…卵…?」
会話の流れが急に追えなくなり、ただ難しい顔で神秘的な光を放つピアスをじっと見つめた。
「突然だけどアリスちゃん、卵料理ならなにが得意?」
アリスは料理を積極的にする方ではない(苦手じゃないが手伝い程度がほとんどである)。最近卵を使った時の事を思い出してみる。
「…マヨネーズです。」
得意なものは何だと聞かれたのを忘れたようだ。後ろのヘリオドールはぽかんと口を開けて物珍しそうに彼女を見ている。
「…ナンセンスね。と、冗談はさておき…わざわざ遠のいたのには意味があるってこと。」
手のひらに乗せたピアスを遥か真上へと放り投げ、一番高いところに到達するとそれは一瞬にして奇妙な形状をした杖へと姿を変えた。卵など妙な単語そっちのけでアリスの目は手に戻った杖に釘付けになった。
「すごい!手品みたい!」
手を合わせて瞳を輝かせる。だがそこは大人なのだろうか、調子に乗ることはなかった。よく見ると杖の上に乗っている水晶が先程のピアスの装飾部分と非常にそっくりだ。

「いい?今からあんたは世界を救いにいくのよ。」
またもや背中を向け腕を伸ばして杖の先を前に向ける。頭も心も整理がつかないアリスを置いて話は勝手に進んでいく。それでも聞き捨てならないことはそのまま聞き流したくなかった。
「どういうことなの?」
世界を救う。まさか本物の勇者にでもなるというのか。
「まさかあの方のもとへ…?」
ヘリオドールが一人小言を漏らすがどうでもよかった。杖の先の水晶が淡い光を内側から灯していく。
「自分で撒いた種は自分で刈り取りなさい。それだけよ。」
水晶は段々と眩しいぐらいの光を帯びる。するとただの雑木林の風景の真ん中に小さな穴が現れては人が入れるぐらいの大きさにまで膨張した。奥は違う景色を映し出している。物凄く違和感があった。






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