「わぶっ!!?」
アリスの体が勢いよく下に落下した。頭から真っ逆さまに落ち、足が重力によって空に軌道を描いて振り下ろされ体は前転。おかげで背中と足を強く打ち付けた。
「ん…んん〜〜〜…!!」
頭を手で覆いのた打つ。痛いも何も、下手すれば首の骨も折って地面に落下してすぐに天国に昇ることになっただろう。…というのも大袈裟だが実際のところとてつもなく痛いのだ。今のアリスを例えるなら殺虫剤をかけられた瀕死の虫みたいに滑稽だ。

「いった〜い!誘ったのならクッションぐらい用意してよ!」
仰向けからゆっくりと体を起こす。無茶な話だ。
「…うぅ…。でも前にもこんなことあったわよね。あのときは私が勝手についていったんだけど…って、あれ?」
そして立ち上がる。不思議そうに呟いた。
「なんで忘れていたのかしら。「あんな事」。普通、頭を打ったら忘れるものよね?…待って?今まで忘れていたことを思い出したのならそのかわりまた何か一つ頭から抜けたんじゃないかしら!」
ほんの呟きがまた病的な独り言の域に伸びた。内股で両手を頬に当てていかにも困った素振りをする。

「…にしても、広いお部屋だこと。」
あざとい素振りをやめて、その場に突っ立って周辺を見渡す。木の板を列べた床はピカピカに磨かれ、その上をこれまた高級感溢れるふかふかの赤いカーペットが敷かれていた(いずれにせよカーペットは薄いので痛いことには変わらない)。アリスが入り込んだ出口側の鏡も化粧台の一部になっており、こちらは金色に輝いていた。

部屋はとにかく広い。アリスのいた部屋も広いが比べ物にならないぐらい広い。民家の部屋から王家の部屋に飛び込んだよう。白亜の壁の所々に金の枠にはめられた絵画が飾られている。窓枠やドアノブまで金。極めつけは天蓋つきの一人で寝るには勿体ないぐらい大きなベッド。滅多にお目にかかれない代物を目の当たりにしてアリスは唖然としている。

「…理不尽だわ。こういうの不公平だわ。鏡って全く同じ景色を映してるのにこんな世界を隠しているだなんて!」
あまりの差を見せつけられ思わず訳のわからないことを口にした。特に気にくわないわけでもない。







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