「…………それで?」
机に頬杖を突いてこっちを無表情で見つめる。アリスは答えに吃り右往左往と目を泳がせた。一大事をどうやって食い止めたらいいか、具体的な案も特に無く、こちらが提示を求めたいぐらいだ。
「そ…それでって言われても…。」
どうにかしてほしいの一点張りしか出来そうにない。先生にあてられ皆の前で立たされた時に似た緊張感と妙な息苦しさに襲われる。助言を貰いたかっただけなのに、自らで知恵を絞ることになるなんて此処に来た意味はあるのだろうか。
「すみません。全く思い浮かびません。」
溜め息つきながら、とうとう白旗を上げるアリス。
「ならしょうがない。私にもどうすることは出来ない、まことに残念だ。」
しかしジョーカーは彼女に助け船を出すどころか椅子を足で回して背中を向けてしまった。そして、子に手を伸ばし片手で中をまさぐると一個のシュークリームを取り出して早速口へと運ぶなど、人の話に真剣に耳を傾ける様子ではなかった。
「ならばこんなところに最初から来ないだろう。答えは解くものだけではない、求める答えだってある。いつか僕にそう言ったのは貴方じゃないか。」
アリスの一歩前へ出て彼を説得しようと試みるシフォンも、気障ったらしい言動や澄まし顔とは裏腹に内心ではアリスが言ったことが頭の隅に引っ掛かり、出来れば彼女を問い詰めたくて仕方がなかった。やはり知ったのは初めてだったのだ。

「……君達は勘違いしているね?」
かくいうジョーカーが振り向いた。喜怒哀楽を超越し、全てを達観した瞳が二人を見下ろす。だがまたすぐに前を向いてしまった。
「勘違い…?」
二人は、何をどう拗れたまま脳に叩き込んだか見当も付かない。彼は饒舌に語りだした。
「確かに創ったのは私だ…しかし、ただの基盤を築いただけであって淘汰の国もとい一つの国の統治者ではない。私はありとあらゆる世界を具現化する何かに過ぎず、幾多の世界から多数分岐しそれぞれ独立した物にいちいちずっと構っていられるわけない。」

よくもここまで難解な語句を並べ羅列することが出来るのか、それと聞く辺りでは彼はさほど早口ではないのに息継ぎすらしていない。シフォンさえ改めて感心を覚えた。アリスは五割ぐらい、耳から耳へ通り抜けていたのだが。

「神は相変わらず残酷だな。どこの世界でも同じように。」
話を理解したシフォンは彼を神と形容し吐き捨てた。だとするとアリスは今、神様の前に居るということになる。逆に謎の不安に駈られた。
「話を聞いていなかったのかい?」
すぐに返事が来る。アリスよりは真面目に聞いた上でのあの言葉だったのだが。
「やれやれ、人はすぐ偶像を作って勝手に祈り勝手に恨む。神のせいではない、人々が起こした業が原因でその報いを受けているだけなのに、そもそも私は神ではない。」
少しためてからまた続けた。
「私は何でもない。世界の創造者を神と呼ぶならまた私もそう呼ばれているのみ。ジョーカーというのも仮の名の一つ、私には名前などない。おっと、話が逸れてしまったね?なんの話をしていたんだったかな?」

本当に忘れてしまったのかわざとなのか、いつのまにかこっち側が忘れてしまいそうだ。これだけ聞いて、なんとなく良い返事は貰えないと思い知らされる、それでもアリスは駄目押しでもう一度強く意思を主張した。

「あの…お願いします。私、あの国から色々なことを教わったり友達も出来たの…私が必ず守る、だから、どうしたら…きゃあああぁ!!?」
突然、アリスの足元に円い穴が現れ、そのまま彼女は無防備に落下していった。
「アリス!?」
吃驚するも当然、傍にいた人影が一瞬で姿を消したのだから。だがシフォンが気付いたときには穴は収縮し、ただの綺麗に磨かれた床に自分の影が伸びていた。








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