シュトーレンがアリスの袖を摘まむ。
「アリス。あいつ、いきなり首にいったよな。」
自身の首に指を滑らせる。彼が何を言いたいか、すぐにわかった。
「首を切ったら即死だわ。」
理屈や理由はさておき、間近で見たことのあるアリスの言葉には説得力がある。しかし、同じ光景を一度は目の当たりにしたことがあるだろうフィッソンはいつになく真剣に、剣の行く先を目で追った。
「その通り。ここで相手を不慮でも殺した場合は今までの功績を失うことになる。あやつはかわすと思ってわざと狙ったのだ。」
アリスもシュトーレンもフィッソンの言っている言葉の真意がさっぱりわからなかった。
「そして振り回されているのはレオナルドの方だ…まず勇馬の顔を見れば分かる。」
二人はよく目を凝らす。視力のいいシュトーレンも、あれほどまでに俊敏に動き回る相手を目で捉えるほどの動体視力は持ち合わせていない。
「笑って…いる?」
ほんのわずかな間、アリスはしかとその瞳に映す。確かに彼は、笑っていた。

「てめぇ…当てる気ないな?」
先に吹っ掛けておいては行動がいましがた矛盾しているのにレオナルドも違和感を覚える。更に疑う。これは罠ではないかと。
「考えががまだまだ甘いどす。」
先読みが浅いと察し、ユーマは更なる攻めにかかる。今まで通りレイピアを前に突く、案の定レオナルドが軽々とよける。彼の力と斧をもってしたら針のような剣などたやすく真っ二つにすることは可能だったが反射的にかわしてしまったのが災難。あけた視界。そのまま前へ突き進む。
「背後をとられたか?」
だがレオナルドはすぐ順応する。足を広げて振り向き際に真横に斧を振り回したがユーマは早々と中腰でかわした。重く、大きな武器は次の攻撃に至るまでの時間が遅い。捻った状態でしばらく停止した隙だらけの体…ではなく鎧の留め具をそれぞれに一秒でも余るほどの速さで三回の攻撃を繰り出し全て狙っていた所に見事命中した。砕かれた留め具は役目を果たせず、防具は形を維持したまま地面にばらばらと落ちた。
「うおおおぉなるほど!ユーマ氏…相手の身ぐるみを破壊して無力化を見計らったようだ!!」
実況がマイク越しにさぞ興奮しているのか分かる。
「あられもない、えらい雅どす。」
すかさず次はマントを留めている紐を斬りにかかった。実際、レイピア術の中で刃をマントで巻き取るのは正規の技であるらしい。それを危惧したのか、はたまたただの晒しあげか。
「じゃあもっと見せてやるよ。」
レオナルドは不適な笑みを浮かべては素早く左の籠手で刃を受け止めた。鉄と鉄同士がぶつかり甲高い金属音が鳴り響く。
「あんた…これは…!わざとか!?」
「そいつはどうかな。」
ユーマのレイピアの先端は籠手の留め具に突き刺さっていた。至近距離ではない限り相手が自分のどの一点を狙っているかなど予測するのは難しい。そういう策略的なものではなく、ただ単に向かってくる剣の先を見極めただけである。後者もまた、至難の技であるが。亀裂が生じて籠手も同じよくに足元に落下した。

「…まあ!まるで獣みたい!」
口許を手で覆い大袈裟に驚く素振りを見せるアリスのおっしゃる通り、防具が無くなり剥き出しになったのは獅子とも言いがたい金色の毛に被われ筋骨隆々とした悍ましい獣の腕だった。







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