ドアの奥の景色は薄暗く、全開して外側の射し込む光をあてにしてやっとぼんやりと細部が視認出来たほど。最初に居た空間とは正反対で狭く、片隅に一人寝れるぐらいのベッドと大きなクローゼットがあり小物が散乱していた。民家の中にある個人部屋といった印象が強い。窓もカーテンで閉めきっている。

「…なんだ、これは…!」
しかし、レイチェルが驚きを顕にした理由は物が散らかっているとか部屋自体には存在しなかった。ベッドのそば、茶色でやや癖っ毛のロングヘアーの女性がバスローブ一枚で横たわっており、その傍らにはベージュのダッフルコートを着た青年が立って女性を見下ろしていた。どちらの顔も鮮明に見えない。
「俺の声が聞こえる…。」
青年は力の抜けた弱々しい声で呟いた。それにもだが、こちらを振り向く顔はまさしくレイチェルと瓜二つだった。思わず目を疑う。違いと言えば服装と耳が人のもののみである。
「お前は…最近俺の夢に出てきたな…。」
生気のない虚ろな顔はぎこちなく不気味な笑みに歪む。レイチェルの身の毛がよだつ。本当に自分にそっくりそのままの顔がこんなにも人を不快に思わせることが出来るとも信じたくなかった。
「わけのわかんねぇこと言ってんじゃねえ!その女はどうした…なんで倒れてる!?」
と、問い詰めるレイチェルの声は上擦っている。逃げ場がないが性格上、後ろに退くことはしなかった。一方、青年は全く物動じしない。
「俺が殺したからだよ。」
「…は?」
一瞬、思考が止まる。そこを青年は畳み掛けて全てを吐いた。
「こっそり跡をつけて、鍵はピッキングして、家の中に隠れてこいつが部屋に入った頃侵入して首を絞めてやったのさ。一応ナイフも持ってきたけどね。」
青年はまるで他人事のように淡々と語る。全くの他人のレイチェルは何かしらの感情が込み上げてきた。
「動機も言っておこうか?思い出話みたいになっちまうけど、死ぬまでに誰かに聞いてほしかった気もするし…。」
堪忍袋の緒が切れ、脳天まで熱い物が沸き上がりついに黙っていられなくなったレイチェルが血相を変え声を荒げた。
「ふざけるな!てめぇ自分が何したのかわかってんのか!!」
「人を殺した。この手にまだ…嫌でも残ってる。」
今度は青年の笑みがどこか物憂いさを帯びる。







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