だがどちらが強い弱い、どちらが勝とうが負けようがアリスは片側の味方につくつもりなど更々なかったのだ。
「まあ、いい迷惑だわ!」
するとフィッソンがアリスの肩を叩き、助け船を出すかのように前方の様子をうかがいながら耳打ちした。
「あのような輩共は放っておいて我々も祭りを観に行かないか?」
曇り気味のの はひ顔が晴れる。こっちの方が俄然楽しそうだった。気付かれぬよう小声で話す。
「行きたい!どんなお祭りかしら…。」
「お祭り!?」
小耳に挟んだシュトーレンが話に食い付いてくる。彼はお祭りだろうがゲームだろうがなんでもいいのだ、ただ面倒な事は避けたいだけで。フィッソンは口元に人差し指を立てる。
「ついていきたいのなら奴等に見つからぬように、忍び足で行くぞ。」
アリスとシュトーレンは緊張が滲み出た面持ちでうんと頷いた。鉄がぶつかり合う音がすると思いきやいつの間にかパルフェとフィエールは一戦を交えている。五分五分の戦いだ。こちらには目もくれない!

「なんというか、ここの国のひとは喧嘩して決めるのが好きなのね。」
「ほんとだな。」
そうではない平和主義のフィッソンは内心呆れ返っている。三人はまた二人の様子を一瞥し、隙を見ては出来る限り気配ごと消しつつ抜き足差し足忍び足で城の玄関口の前の道を左に曲がった。




――――――――…

雲は更に大きく厚く、次第に雪がぱらぱらと降ってきた。冬服とはいえど暖炉のあるあたたかい部屋の中で過ごしていた少女の格好は凍えるような寒風の吹く外には向いていない。首もとに巻いているマフラーが唯一の防寒具だが、空気がスカートの中に入り込み体の芯から冷えてくる。シュトーレンに至っては寒さに弱いせいもあって歩くのを止める度にアリスかフィッソンの腕にしがみついていた。フィッソンは、全く寒さに堪えていなかった。
「お、おまえ…寒くねェのか…。」
歯と共に声も震えるシュトーレンは限界を迎えそうだった。
「はっはっは…我は不死鳥ぞ。これぐらいなんともない!」
豪快に笑い飛ばす。アリスは横で「答えになってないわ。」と呟いた。
辺りを見てみると、段々人数が増え、皆マフラーや帽子に手袋コートとしっかりと着込んでいた。
「いいなー…みんな、あったかそう。」
羨みの声を漏らす。やがて三人は人いっぱいの壁に差し掛かった。何かを傍観しているよう。
「向こうでお祭りをやってるのかしら?」
いくら頑張って背伸びやジャンプをしてみても全然向こうの先が見えない。それを見兼ねたフィッソンが目の前の男性の肩をつつく。
「あん?なんだ…ん!?あなたはもしかして…!?」
こちらを見るたび目の玉を剥き一歩後ずさる。
「我は不死鳥の君…異国の友に間近で見せてやりたいのだが、よいだろうか?」
彼の要望に男性は酷く慌ててそこを退いた。
「ひいっ!どど、どうぞ!」
すると、男性に続きこちらを見るたびにざわつきながら押し退け合う。
「マジかよ…不死鳥の君が賭け事に来たっていうのか?」
「いや、わざわざ見に来て下さったのよ…。」
「側にいる女…なんかで見たことあるようなないような…。」
やがてみるみるうちにアリス達の為にと道ができた。信じられるだろうか、たかが一声でこれだけの人を思うがままに動かしたのだ。
「すごい…。」
愕然としているアリスとシュトーレンをよそに、フィッソンは「感謝する。」と一言告げて先頭を歩いた。








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