アリス一行はフィッソンに連れられ白の女王がいるという場所に辿り着いた。
「ねえ、フィッソンさん。私達随分たくさんの扉を抜けてきたけど。」
「全部森だったぜ。扉の意味あんのかよ。なあ?」
呆れたと言わんばかりに不服そうな顔を見合わせるアリスとシュトーレン。
「出た先出た先が違うところだったら困るだろう?遠い道を縮めておるのだ。近道だからな、はっはっは。」
何がそこまで愉快なのかフィッソンは屈託ない笑い声をあげる。実際目的地までは長い長い道のりを歩かなくてはならないが、行く所にある扉はその道の途中を省いて無理矢理繋げているのだ。短縮はできても同じ景色しかないのでさぞかし長く感じたに違いない。
「だがお主達よ。女王の城は目と鼻の先であるぞ。あれだ。」
フィッソンが指を差した方を見ると、白亜に塗られた石の壁と円柱の屋根をそのまま被せたような柱が幾重にも聳え建っている。それらの前方にあるのがおそらく玄関口なのだろう。ただ、城というより小さな村の教会みたいだった。しかも空も白く厚い雲に覆われているためあまり目立たない。

「あれが…城?」
いかにも疑いを露にするアリス。
「どちらかといえば家だ。マジックミラーを知っておるか?」
フィッソンの突然の問いかけにアリスは首を横に振った。対してシュトーレンはどこか自慢げな顔を浮かべてこう言った。
「マジックマッシュルームなら知ってるぞ!毒キノコだぞ!」
聞いたこともない単語が返ってくるとは思わず一瞬フィッソンが混乱する。全くこのような知識はどこから聞いてくるのだろうか。
「…それは、すまん。我は知らん。」
難しい顔をする出題者。アリスが話を戻す。
「マジックミラーてなに?初めて聞いたわ。」
単語の響きが更にアリスの興味を駆り立てる。
「マジックミラーというのは外からは見えぬが内側からは向こうの景色が…えー…まあ、そんな感じの不思議な鏡だ!」
フィッソンは結局途中で説明することを放棄してしまい、アリスもシュトーレンもわからず仕舞いだった。ふとアリスは「外から見えないんじゃ意味ないじゃない!」と口から出そうなのを飲み込んだ。

「あの柱が結界を張っているのですよ。」
その声は、この場にいる誰のものでもなかった。そして声の主はいつの間にかアリス達の後ろにちょこんと立っていた。
「「うっわああああああああ!!!」」
心臓が止まるかと思うほど吃驚したアリスとシュトーレンは声を揃えて絶叫した。二人の鼓動は気持ち悪いぐらいに動悸する。フィッソンは予測していたかのように苦笑いしながら振り向いた。
「女王…相変わらずだな。」
女王と呼ばれた人物はにこりと微笑む。
「うふふ、今か今かと待っていたんだから。」
その隣にはもう一人いた。どちらも見たところは少女だ。話しかけた方は大人びた雰囲気を帯びている。柔らかな真っ白の波毛に黄金の冠が映える。そこから少し髪を通していた。身に纏うは金、銀などの装飾に飾られた純白のドレス。胴から腰辺りまでのものは布ではなく服には用いらない頑丈なもので出来てそうだ。黒がアクセントに入っており、どこかチェス盤を思い浮かばせる。
もう一人は対称的に白と黒がメインだが、こちらはワンピースに鎧を合わせつけた格好をしていた。ただ、袖は長く手が隠れているのに何故か腹部は肌をさらけ出していた。黄緑色の長髪をお団子にし、またそこから伸ばしてリボンでまとめている。よく見たら人の耳なのに長く先が尖っていた。




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