「それはそうとジャッキー様。あの二人もお目覚めになられたのですか?」
ぱっと手を離し涙目で踞るハーミットを一瞥し至って澄まし顔のスネイキーが話を切り替えた。
「愚問だな。貴様らも耳にしたはずだ、目覚めの咆哮を。」
皆、それぞれ頷いた。聞くまでもないことは訊ねた本人も薄々わかっていたのだが。
「奴等は封印が解かれて間もなく地上に出たのだろう。」
そう言うジャッキーはたいして気にすることも心配することもなかった。スチェイムは一人、浮かない顔をしている。
「案ずるでない。奴の側にはあいつも必ずいる。そもそも私の配下にいるのだ。」
だがスチェイムはうつむいたまま。ジャッキーはその理由を知っていたため何も言わなかった。
「…ビバーチェにはテレパシーを送った。」
彼の口にした名前に唯一反応したスチェイムが顔をあげる。ジャッキーは続けた。
「さすが、さかりにさかって…フッ…封印状態が半端だっただけにすぐに向かってくれたよ。」
「ジャッキー様…あの子はまだ!!」
焦燥感と不安にすがり付くような目と声で訴えるスチェイムを不思議そうに見つめる他二人と無表情で見下ろすジャッキーは頬杖をついていた腕を組んだ。
「愛娘もそろそろ一人立ちさせないと…な?」
「………。」
またも俯き黙りこんだ。隣でハーミットがなにやら一人そわそわとしている。
「ねーそろそろあたしたちも外にでたいおーいいー?」
彼女を含め他の二人も目が覚めてから大分時間がたっている、そのなかでも退屈が嫌いなハーミットは久々に外の世界を見たくて仕方がなかった。
「構わん。だが行動する前は一度先のことをよく考えてからにするんだ。に…。」
「いえっさー!」
も話を最後まで聞くことなく、魔法印が刻まれた腹部から身丈ほどの長さの箒を取り出した。決して体内にしまいこんでいたわけではない。早速跨がればそれに応じたように体がふわりと浮く。
「そーれ、びゅーん☆」
活きのいい掛け声と共にハーミットを乗せた箒は飛び始めから一気に飛ばした。ここであんなに勢いをつけたらどうなるか、本人以外のみんな予測できている。まずここが屋内であること、まさか扉を突き破るつもりならそれも不可能。
「ひゃっほおおおおおおお!!」
と随分気持ち良さそうな声をあげているが事態が急変するのはものの数秒後だった。
「…んぎゃああああああ!!!?」
遠方で何処から絞り出したんだと疑うぐらいの悲鳴と、擬音にするならゴーンという鐘をついたような鈍い音がこだました。スネイキーは目を凝らす。
「…扉すら目指してないなんて…。」
ジャッキーは無表情のまま呟く。
「奴は何がしたかったのだ。」
その答えを知るものは居ない。バカをさらけ出しながらハーミットはぐったりとうなだれている。日頃からあの調子なので誰も心配はしなかった。
「それはそうと貴様ら…私はジャッキーではない。黒翼の破壊王ジャバウォックだ。忘れたわけでは…ないだろうな?」
「はいジャッキー様…あ。」
しまったと口を抑えたが遅く、ジャバウォックが指を鳴らし、突如地面に現れた穴にスネイキーの体は吸い込まれ消えていった。







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